ユーザーとの接点になるサービスに関する開発も始まっており、この分野でも機械学習が一役買っている。開発はパーキンソン病患者の体験を理解するために機械学習を利用しているほかの慈善団体と協力しながら進められている。このツールはまだプロトタイプの段階だが、個人の回答を分析し、同様の体験をしている人を探して、過去のデータから適切なアドバイスや支援を提示するというものだ。
「チャットボット的なアプローチは避けようと考えている」とDodd氏は言う。「その種の技術は質の高いアドバイスを提供できるが、現時点では不快な体験を生み出すだけだ。われわれは、機械学習のアルゴリズムによって、小さなアドバイスを組み合わせて提供するアプローチを取ることを考えている」
このツールは電子メールで情報を収集する。Parkinson's UKのサービス利用者が、診断結果や、その人の性格、症状、感じている困難などに関する最初のアドバイスを提供する。すると機械学習システムがその反応を分析し、アルゴリズムによってもっとも適切な情報を選択する。
これらの小さなアドバイスは、電子メールでパーキンソン病患者に送られる。Dodd氏によれば、これは電子メールがもっとも多くの人に対応できるアプローチだからだという。パーキンソン病は若い人でも発症することがあるが、Parkinson's UKの顧客グループには年長の人が多い傾向がある。
このプロトタイプに取り組んでいるグループには、ほかの慢性的な病気に取り組んでいるさまざまな慈善団体が含まれている。このプロジェクトの技術パートナーは、デジタル化に関する専門性を生かして社会的な問題に取り組んでいる社会的企業Reason Digitalだ。Dodd氏は、このプロジェクトの長期的なメリットは大きいと考えている。
「この先には興味深い景色が広がっている」と同氏は言う。「この機械学習システムは、個人から得られた回答から、それらの人々とほかの人たちと似た課題を抱えていることを導き出す。そして、その人たちの助けになった情報を自動的に伝える。このシステムは時間の経過とともに、ユーザーの好みや、何がユーザーの役に立ったかを学習していく。これは小売業のパーソナライズ体験にも似ているが、パーキンソン病患者向けに作られたものだ」
Dodd氏らは常に、新技術を生かせる新しい応用分野を探している。Parkinson's UKは組織内にデータサイエンスを扱える人材を育てることに力を入れている。このことが、専門的な知識を備えた外部組織とのギャップを埋めることになると認識しているためだ。