パーソルテンプスタッフでは、社員が新たに入社した形を模倣して、ロボットにも人事発令を出している。このような取り組みは同社に限らず、ロボットに「○○クン」と愛称をつけるなど、擬人化する施策を用いる例は枚挙に暇がない。海外事例は寡聞にて存じないが、万物に神が宿るという日本人特有のアニミズム信仰がロボットにも反映されているのではと愚見できる。
同社が現場業務を洗い出しところ、250案件中自動化できるのは50件程度だったという。同社は「まずは案件データを取得して、適合するものを増やしていく。大きな成果を得るためには、既存プロセスを置き換えるのではなく、“業務再設計=ロボ最適化で再構築”するのが大事」(渡部氏)と取り組みの姿勢を語る。
他方でパーソルテンプスタッフがRPA展開に成功した要因として、「現場を巻き込む」のが大きいと説明。業務再設計は業務改革部門が現場と協力して進めることが重要であり、(企業側が)勝手に進めるのではなく、部署のキーマンを巻き込みつつ、導入後を見据えた手厚い現場告知が欠かせないと渡部氏は説明する。
「現場の理解がないと導入後に開発後の修正や拡大は進まない。入り口でしっかりコミットすすれば、その後の困難はともに乗り越えられる」(渡部氏)と強調。また、PoC段階であれば、無理に自動化せず、リスケジューリングも厭わない姿勢も欠かせないという。
「ダメなものはダメ。諦める、捨てるのが大事」(渡部氏)と述べつつ、RPAによる業務自動化領域を拡大させるために渡部氏は「逃げ場をなくして覚悟を持たせるため、覚悟と責任を持った専任体制を用意すべきだ」と熱意を持った体制作りが必須と語った。
最後に聴講者へのメッセージとして、「『トライ&エラー』。失敗を前提に管理する視点が必要。何もしないとゼロ点だが、失敗でも40点は取れる。そこから得た知見を積み上げるのが大事」「RPA導入後の業務変化に応じたロボットの調整が必要。運用管理を想定した人員リソースの確保も欠かせない。弊社の例では多い月は1人月あたり400時間を超える。少ない月でも1人月あたり50時間」(渡部氏)と事業変革に伴うプロセス変化への対応姿勢構築を推奨した。
続けて「統制ルールと管理ツールの策定で“野良ロボット”を抑制すれば『セキュアで適確・適正な運用』も可能だ。経験から言えるのは、最初は死ぬほど大変な気持ちになったが、突破すれば成功事例が積み上がり、加速度的に世界が広がる。まずは挑戦してほしい」(渡部氏)と聴講者を鼓舞した。