五十嵐光喜氏
Dropbox Japan(千代田区)は3月20日、顧客のファイル保存先環境の選択肢に日本を追加すると発表した。Amazon Web Servicesの東京リージョンにホスティング環境を構築。法人顧客を対象に日本国内のファイルへアクセス、保存できる環境を提供するという。2019年夏を目処に開始する。
国内のホスティング環境は、顧客から最も多い要望になるという。代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏は、2019年度の事業戦略説明会で「アプリケーション部分に目が行きがちでなかなか見えない縁の下の部分への投資になるが、クリティカルな種類のファイルを国内に置きたいというニーズは強い」と語る。
対象はビジネス向けに展開する「Dropbox Business」の「Standard」「Advanced」「Enterprise」の3つと、教育向けの「Education」の計4つのプラン。
ニーズに応じてファイルごとに置き場所を選択可能で、管理者が一元管理できる“マルチチーム管理機能”にも対応するという。追加コストは発生せず、既に他のリージョンにあるファイルの移動にも無償で対応予定。“コスト”“移行サービス”“管理”の3つが特長になるとしている。
環境という観点では、アクセススピードを世界中どこからでも向上させるべく、ユーザーにより近い場所の接続ポイント(Point of Presence)を構築するDropbox。2017年には日本にも開設し、現在は世界中の主要な都市とつながっているという。「より早く、セキュアなインフラを提供できるネットワークに加え、今後はデータのホスティングという環境も提供できる」(五十嵐氏)
世界中にNW網を構築(出典:Dropbox)
NASDAQへ上場した2018年の売り上げは前年比26%増。日本円に換算して約1500億円に到達し、有料ユーザーは170万人増加したという。特に2011年から開始したBusinessプランが飛躍し、現在では40万以上の契約があると説明する。
好調の根底には、“コンテンツ”“コーディネーション”“コミュニケーション”の頭文字を取った“3C戦略”があるという。活用方法は米国で創業した2007年の“クラウドを活用した個人用途のファイル保管”から“コンテンツを中心としたチームとしての同期”へと大きくシフト。「チームとしての同期を進めるために必要な3つの要素をあわせ、一つのプラットフォームとして提供する」(五十嵐氏)戦略を進めていると説明する。
創業時からシフト(出典:Dropbox)
アプリケーションは、全てを提供するスイートではなく、顧客が使いたいツールとインテグレーションするオープンエコシステム方式を推進。「メインフレーム、UNIX、Windows、インターネットと時代が変遷し、オープンなのかスイートなのかという議論が必ず出るが、ユーザーにはベンダーロックインされたくない、主体性を持って自分でインテグレーションしていきたいというニーズがあると感じている」(五十嵐氏)
“3C戦略”は他社サービスとコラボレーションして展開する(出典:Dropbox)
Dropbox自身のサービスは、人工知能(AI)や機械学習(ML)機能を内包し、コンテンツの整理や優先順位付けなどで検索性能の向上を図る「DBXi:Dropbox intelligence initiative」、アプリケーションからコンテンツを開くのでなく、コンテンツを起点にアプリケーションを立ち上げることでシームレスな作業を支援する「Dropbox Extensions」など、コンテンツを中心とした機能を強化。“ロングタームの3C”を実装できる機能で、“コラボレーションプラットフォーム”を目指すという。
日本でのビジネスは建設業のほか、教育業、小売業、サービス業などに注力。生産性の改善、データの保全など、Dropboxを中心に現場のデジタルトランスフォーメーションを推進する顧客が増えているという。「クラウドへのためらいを持つ顧客は多く、まだまだ広がる余地がある。クラウドの良さを広める活動をしていきたい」(五十嵐氏)