NECは3月28日、東京大学大学院 情報理工学系研究科の研究グループと共同で「高速カメラ物体認識技術」を開発したと発表した。
同技術は、製造ライン上を高速に移動するビンや缶のラベルなどの外観検査、錠剤や食品の異物検知などに適用が期待される。高速カメラで撮影された毎秒1000フレームの大量の画像から認識に適したものを瞬時に選別し、高速かつ高精度に検査の合否を判別する。製造ラインに適用することで、製品検査のための製造ラインの操作が不要となるため、スムーズな導入と生産効率の向上を実現する。これまで抜き取り検査しか行えなかった対象の全品検査が可能となり、製造ラインにおける異物混入防止や品質の均一化に貢献し、品質管理を強化できる。
高速カメラ物体認識技術の概要(出典:NEC)
NECでは、カメラの前を0.03秒で通過・移動する物体について、同技術を活用することで、刻印された5mm程度の微細な文字の違いをリアルタイムで、95%以上の精度で判別できることを確認している。
同技術は、大量の画像から物体認識に適したものを瞬時に選別する機能と、同一物体を撮影している複数画像を用いてこれらをリアルタイムに認識する機能で構成されている。
画像の選別では、高速カメラの追跡処理で計算される物体の移動量などの情報と、画像の鮮明さなど認識に有効な画像との間には高い相関があることに着目し、この関係に基づいて物体の移動量や、画像の鮮明さを表す輝度値から適した画像の判断基準である適合度を設定する。この適合度を活用して、それぞれの画像が認識に有効か否かを人工知能(AI)が瞬時に判定・選別する。これにより、毎秒1000フレームもの対象物体の大量画像から、キズや刻印の有無が鮮明に撮影されているなど認識に適した画像のみを選別し、処理を行う画像数やその解析時間を数十分の一に削減できる。
リアルタイムの認識では、高速カメラから得られる画像それぞれに対して、小規模なニューラルネットワークを用いて軽量化した認識を繰り返し、その認識結果を突き合わせて、最も多い結果を正解とする多数決方式を採用している。これにより、従来のように1枚の画像のみで認識する場合に比べて、約4割短縮した0.01秒程度で高速処理を行うことで、高速で動く物体のリアルタイム認識が可能となった。