Dell Technologiesは、4月29日から5月1日まで米国ラスベガスで年次カンファレンス「Dell Technologies World 2019」を開催した。イベント中3回ある基調講演のうち2回にVMware 最高経営責任者（CEO）のPat Gelsinger氏が登場するなど、VMwareとの統合を印象づけた。
いよいよファミリーの統合が始まった
初日の基調講演に登壇したDell Technologies 会長兼CEOのMichael Dell氏は、まず間もなく創業36周年を迎えることを報告した。「この35年間、技術の民主化によりたくさんの素晴らしいことが起こった。次の30年はもっと良くなるだろう」と語り、自動運転タクシーやドローンによるデリバリーなどが可能になっていくと予想しながら、「技術をどう使うか、どのような価値を生み出すかは人間次第だ」と述べた。
技術が与えるインパクトがこれまでのITにとどまらなくなっており、あらゆる業種、部門が影響を受け、仕事も変わる。「企業は全て、デジタル時代の自分たちの姿を再構築する必要がある」とDell氏。Dell Technologiesは7つの製品ファミリーを持つが、これをデジタル時代の組織にとって「不可欠なインフラ技術」とした。
「コアではDell EMC、VMware、Pivotalを組み合わせて、開発者が親しみやすく、高度に自動化され、かつインテリジェントで効率の良いアーキテクチャーがあり、VMwareの仮想化パワーがネットワークを含む全てのインフラで活用され、ソフトウェア定義をエッジ、コア、マルチクラウドにもたらす。全てのクラウドと連携できる」と、Dell氏は特徴を説明する。Kubernetesもサポートしており、これにより「アプリ、データ、ワークロードがダイナミックに、高度に分散されたネットワークの間を動く」という。
7つのファミリーには入っていないが、Dell氏は「クラウドにおけるデータ統合を支援する」としてBoomiの役割も強調した。このようにさまざまな技術を組み合わせてソリューションを構築できるのがDell Technologiesの強みとなる。これをDell氏は、「Better together（組み合わせるとさらに良い）」と表現した。
学生時にDellを創業したMichael Dell氏、もうすぐ36周年を迎える
クラウドサイロが生まれている
この日の目玉は、「Dell Technologies Cloud」だろう。Dell EMC、VMwareなどファミリーの技術で構成されるハイブリッドインフラソリューションの総称だが、Dell Technologiesとは、PCのDell、ストレージなどエンタープライズシステムのDell EMC、仮想化のVMwareなどの企業の集合体を表す名称であり、固有の製品は持っていない。”Dell Technologies”が名称に入ったソリューションはこれが初であり、この製品の重要性がうかがえる。
Dell Technologies Cloudを発表したのは、同社バイスチェアマン＆オペレーションズのJeff Clarke氏とVMwareのGelsinger氏だ。
その背景は、企業内に複数のクラウドがあるという現実になる。「93％がマルチクラウドの環境にあり、平均すると1つの企業が利用するクラウドの数は5つ以上」とClarke氏はいう。2022年までにソフトウェア・サービスに投資する総額は1000億ドルと見込まれており、トレンドはさらに加速する。
VMwareのGelsinger氏は、この状態を「クラウドサイロ」と呼ぶ。「クラウドごとに管理があり、SLA（サービスの水準に関する合意事項）があり、データ環境がある。これがクラウドの採用を減速させている」（Gelsinger氏）。これは、ビジネス面での俊敏性の障害になっていると続ける。
そこで必要なのは、パブリック、プライベート、エッジに拡大できる一貫性のあるビジネスモデルで、一貫性のあるツール、インフラだとするGelsinger氏。これにより、企業の“宝”であるデータに何が起こっているのかを把握でき、データの保存とバックアップを行うことができるとする。「VMwareは創業から約20年、サイロの解決に取り組んできた。今度はクラウドのサイロ問題を解決する」（Gelsinger氏）
VMwareのPat Gelsinger氏（左）とDell TechnologiesのJeff Clarke氏（右）
