Microsoftの最高経営責任者(CEO)がSatya Nadella氏に変わってから、同社のLinuxに対するアプローチは友好的になったが、元CEOであるSteve Ballmer氏の時代から変わっていないことが1つある。それは、とにかく開発者にこだわっているということだ。
先日開催された開発者向けの自社カンファレンス「Build」で、「Windows 10」向けのMicrosoft製Linuxカーネルである「Windows Subsystem for Linux」のバージョン2が発表された。これによって、Windows上で実行されるLinuxディストリビューションのブート時間は短縮される。
また、Microsoftの軽量クロスプラットフォームコードエディタである「Visual Studio Code」(VS Code)は、Googleの開発者にも好んで使われており、今では450万人のユーザーがいるほどの人気を得ている。
Microsoftは今や開発者御用達のコードホスティングリポジトリであるGitHubを傘下に収めており、開発者を専門とする調査会社RedMonkの調査によれば、最近では同社のプログラミング言語であるTypeScriptの人気も高まっているという。
TypeScriptは、世界で最もよく使われているプログラミング言語であるJavaScriptの上位セットだ。大規模なコーディングプロジェクト向けに作られており、そのコードはJavaScriptにコンパイルされて実行される。
RedMonkがGitHubのプロジェクトと開発者が情報交換を行うサイトであるStack Overflowでのやりとりを対象として最近実施した調査では、プログラミング言語人気ランキングでのTypeScriptの順位が12位にランクアップした。
さらに、人気が高いNode.jsのJavaScriptパッケージ管理ツールであるnpmを使っている開発者の半分近くが、TypeScriptを使用しているという。
RedMonkの共同創業者James Governor氏は、TypeScriptの人気が爆発的に高まっている理由を考察している。
TypeScriptはJavaScriptの代わりにはならないが、Webアプリケーションの構築に必要な言語であるJavaScriptを劇的に改善している。
Governor氏は、「JavaScriptを使える開発者のうち、コードに何らかの形での型に関する安全性を求めている人がTypeScriptに向かうのは当然のことだ」と同氏は述べている。
MicrosoftのTypeScriptは、多くのニッチな領域に適応できるだけの柔軟性を持ち、開発者を引きつけるだけの幅広い応用領域を持つJavaScriptの堅牢性の恩恵を受けている。
JavaScript、Java、Pythonは、Tiobe、IEEE Spectrum、PYPLなど多くのプログラミング言語人気インデックスで上位にランクインしている。
TypeScriptが有利な点の1つは、「型を厳密に扱う」言語に対する関心が高まっていることだ。型を厳密に扱う言語にはC++やJavaがあるが、JavaScriptではデータの型を指定する必要がない。
これが、人気があるJavaScriptのフレームワークである「Angular」の開発者が開発言語にTypeScriptを選んだ大きな理由の1つだ。
Angularプロジェクトの中心的なコントリビューターの1人であり、元Google社員のVictor Savkin氏は、「TypeScriptは型を静的に指定する言語が持つ有益な部分の95%を、JavaScriptのエコシステムにもたらした」と述べている。
Governor氏によれば、人気が高まっているもう1つの要因は、開発者向けツールのサポートが充実していることで、Microsoftはこの点でも「JavaScriptやGoを含む多くのプログラミング言語コミュニティで選ばれたコードエディタ」となったVisual Studio Codeの恩恵を受けている。
同氏は、1996年からJavaアプリケーションを書き続けている開発者William Saar氏の記事を引用して、TypeScriptのメリットは多くのJava開発者を引きつける可能性があると述べている。この記事のタイトルは、「企業にはTypeScriptさえあればいいのではないか?」というものだ。
この記事でSaar氏は、「『React』のようなフレームワークはUI開発には向いているが、わたしはJavaScriptのコードの品質やメンテナンス性には懐疑的だった。しかしそれも、TypeScriptを利用することで、開発体験がどれだけ堅牢なものになるかを知るまでのことだった」と述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。