計測のためらいを解消--ワコールがデジタル活用した次世代店舗をオープン

大場みのり (編集部)

2019-05-30 11:22

 人工知能(AI)を活用したワコールの店舗「ワコール 3Dsmart & try」が5月30日、東急プラザ表参道原宿4階にオープンする。日本IBMがコンサルティングを実施し、チャットボット「接客AI」を構築した。

 ワコール 3Dsmart & tryは、デジタル技術を活用した接客サービスで、今回は初めての常設店舗になる。店舗と自社ECの連携を図るオムニチャネルの拠点として設置された。3D smart & tryは「3Dボディスキャナー」で全身150万カ所を計測し、その結果をもとにおすすめの下着を提示する。接客AIによって、ユーザーの体型と嗜好に合った下着選びを可能にする。

 3Dボディスキャナーは、ワコール人間科学研究所で蓄積されたデータをもとに計測を行う。この施設では、1964年の設立以来、4~69歳までの女性の身体を計測し、これまで4万人以上のデータを収集してきた。一方、接客AIにはパブリッククラウド「IBM Cloud」上で稼働する「IBM Watson」の対話型アシスタントサービス「IBM Watson Assistant」が用いられている。同サービスは、利用者とコンピューターが対話するアプリケーションの開発を可能にする。継続的に学習を進めることで、より適切な提案ができるようになるという。

 計測から購入までの流れは、以下の通りだ。

1. 3Dボディスキャナーによる計測

顧客は試着室で、3Dボディスキャナーの画面に生年月日と4桁のパスワードを入力。5秒で体の周径や体積を計測し、カップ数をはじめとする体型の特徴を判定する。自分の下着のまま計測することも可能だが、計測に適しているワコールの「おやすみナイトブラ」を借りることもできる。

2. 接客AIによる商品の提案

判定後、データはすぐに店内のタブレットに転送される。データ保護のため、顧客はスキャナーに入力した生年月日とパスワード、計測後に表示された認証用アルファベットをタブレットに入力。その後、体型データ、年齢、悩み、嗜好などをもとにして接客AIが商品を提案する。150品番の商品が表示され、店頭にないものは自社ECで購入する仕組みになっている。

 5月29日には、内覧会が実施された。今回の店舗設置の背景について、ワコールの総合企画室広報・宣伝部広報・宣伝課を務める中瀬原氏は「これまで計測は販売員が行っていたが、市場調査や実際の接客を通して、多くの顧客が『販売員とはいえ、あまり体に触れられたくない』『下着姿を見られるのに抵抗がある』と感じていることが明らかになった。この気づきから、ストレスフリーな買い物体験に向けて、ワコール 3Dsmart & tryのオープンに至った」と説明していた。顧客にとことん寄り添うことで、最終的に企業イメージの向上につなげたいという。

 今回、日本IBMのサービスを採用した理由として、ワコールの担当者は「これまで取引はなかったが、AIの活用と世界展開を考えた際、高い技術力を持ち、なおかつ世界中で事業を行っているIBMであれば、われわれの目標実現に貢献してくれると思った」とコメントした。

 今後の目標について中瀬氏は「現時点で計測・判定可能なサイズは、カップサイズがA~G、アンダーバストが65~90cmの範囲。また提案される商品は150品番に上るが、われわれが販売している全ての商品ではない。そのため、さまざまな体型の人により多くの商品を提案できるよう、学習を進めていきたい。これからの1年で、当店舗では1万5000人の利用、2021年度までに3Dボディスキャナーを100台ほど設置することを目指している」と語った。

スキャナーの画面に生年月日を入力する。モデルが着用しているのはワコールが貸し出している自社ブランド「Wing」の「おやすみナイトブラ」

スキャナーの画面に生年月日を入力する。モデルが着用しているのはワコールが貸し出している自社ブランド「Wing」の「おやすみナイトブラ」

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