アクセンチュアは6月3日、「グローバル消費者調査」に関する記者説明会を開催した。消費者の“無関心化”は先進国で顕著な傾向が続く一方で、企業は重要な社会的問題に対して明確な態度を示すことが期待されている。
調査は世界35カ国、2万9530人の消費者にアンケート形式で実施。日本の回答者は1460人。金融・保険・通信・小売・ヘルスケア・旅行・公共・石油など、13サービスを対象とした。
レポートによると、先進国では3~4割の消費者が情報収集を行わないままに製品・サービスを購入する、いわゆる“無関心”の状態にある。消費財やヘルスケア・保険をはじめ、コモディティー化が進み、価格や性能などの面で差が出にくい製品・サービスほど顕著になっている。
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その一方で、消費者の70%以上が重要な社会的問題に対して企業が明確な態度を示すことを期待している。この傾向は若い世代ほど強く、18~24歳では実に80%に上る。さらに、日本を含むグローバル全体では、消費者の半数以上が企業の社会的問題に関する言動に失望したと回答。日本における同回答の割合はまだ低いが、「若い世代では40%が企業に失望し、不満を抱いている」(アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 顧客戦略 マネジング・ディレクター 小林正寿氏)
また、グローバルで約半数、日本で約3分の1の消費者が、企業に失望して製品やサービスの購入をやめているという。「失望して離れてしまった消費者の4分の1は決して戻らないことも分かった」(同氏)
そんな中で、企業活動においてはビジョンの提示が求められており、特に日本では50%以上の消費者が重視する傾向にある。
無関心化する消費者は、企業が社会的問題に明確な態度を示すことを期待している。「企業はビジョンの中で自社が成し遂げたい“パーパス”を打ち出し、消費者の共感を得ることが無関心化する消費者を攻略するカギになる」(小林氏)と推察する。
いかに“パーパスドリブン企業”になるか
社会課題解決を志向した経営を実践する“パーパスドリブン企業”は、企業価値を大きく成長させている。アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 顧客戦略グループ アジア・パシフィック統括 マネジング・ディレクターの石川雅崇氏によると、2018年の時価総額上位50社と比べても、パーパスドリブン企業は企業価値を大きく成長させているという。
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一般消費財メーカーのUnileverもそうした企業の1社だ。「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」を目的に掲げ、循環型経済を実現するサーキュラーエコノミーを中核にしたビジネスモデルへの転換を実現し、売上成長を加速させた。既存の縦軸の事業ドメインを超えた、新たな横軸の事業ドメインを定義し、調達・製造・販売などのバリューチェーン全体を変革させた。その結果、消費者の共感・支持を得て、大きな成長へとつながった。
パーパスドリブン企業は、社会的価値や社会変革を捉えた目的を設定し、その目的を上位概念に据えることで事業ドメインの再定義とビジネスモデルの転換を実現する。「パーパスを起点としたビジネスへの転換を実現するためには、『Where to Play(事業ドメインの再定義)』『How to Win(ビジネスモデル転換)』『How to Enable(チャレンジの明確化・変革の確実な遂行』といった3つの要素を明確にする必要がある」(石川氏)
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