ITの進歩とともに、コールセンター業務を効率化するシステムが続々登場している。とりわけ、これまで社内に設置する必要があった構内交換機(PBX)がSaaS化されてからはコールセンター内の風景が様変わりした。インターネットを活用したコールセンター業務で、これまでのデメリットを解消する機能も使えるようになっている。3回にわたり、社会の変化に柔軟に対応できる特性を持つクラウドPBXが新たにもたらす導入のメリットを、活用事例を交えつつ解説していく。
日本におけるSaaS化は2008年頃、アメリカのSalesforce.comによる、顧客管理システム(CRM)プラットフォームの登場が発端となった。クラウドで顧客情報を預かるという、それまでの日本企業にはできなかった領域へ踏み込んだところから流れが変わったのである。
情報通信サービスの普及状況についてまとめた総務省の通信利用動向調査結果によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は2017年時点で56.9%。2016年は46.9%で、1年のあいだに大幅に普及率が上昇したといえる。
今やさまざまな分野でクラウド化が進んでいるが、コールセンターもその例外ではない。これまでは拠点開設のために大規模な工事が必要で、PBXやハードウェアの購入が必須だった。回線数の増減に伴う設定、メンテナンスといった作業なども発生し、拠点を増やす際にも同様に設備増が必要となる。導入時には大きなコストが伴っていた。
クラウドPBXの場合は、ネット環境とPCさえあればコンタクトセンターが構築可能。インターネットを通じて分散している拠点でもサービス利用でき、各種設定もブラウザから行えるため、自社もしくは業者発注が必要だったメンテナンスも不要になった。
コストの大幅な削減が可能となり、複数拠点間の内線化、レイアウト変更に伴う設定変更の簡易化に加え、オフィス移転の際には同じ電話番号を使用できる。場所を問わずに内線通話可能で、保留や転送もハードフォン(電話機)に縛られず、モバイルフォン、ハードを伴わず電話の機能を持つ“ソフトフォン”も活用可能だ。