ソニーは6月12日、機械学習を用いた予測分析ソフトウェア「Prediction One」の提供を開始すると発表した。同社が開発し、ソニーネットワークコミュニケーションズがサービス化したもので、同日付で法人向けに無償提供を開始した。
概要を説明したソニーネットワークコミュニケーションズ 執行役員の渡辺潤氏は、人工知能(AI)の活用が注目されている現状ながら「実際のビジネスでは意外に使われていない」と指摘し、その理由として専門知識が必要になる点を挙げた。

ソニーネットワークコミュニケーションズ 執行役員の渡辺潤氏
Prediction Oneは、「シンプルで簡単」「自動モデリングで高精度な予測」「予測の理由が分かる」「標準的なPC環境で動作」――の4点を特徴とし、いずれもAI/データ分析に関する専門知識を持たないビジネスの現場で手軽に活用できることを意図した結果だという。同氏は、「経験や勘に基づいた従来の予測に比べてより高精度な予測が可能になる」とし、Prediction Oneのメリットが幅広いビジネスで活用できると説明。無償提供により、「予測分析の普及に貢献したい」と語った。
開発を担当したソニー R&Dセンター 統合技術開発第2部門 知的アプリケーション技術開発部の高松慎吾氏は、予測分析について「ビジネスにおける天気予報のようなもの」と説明した上で、メリットは理解されているものの、従来は専門家の不在が普及を妨げていたと指摘する。誰にでも簡単に使え、気軽に分析を実行できるPrediction Oneが従来型の専門家向けのツールとは異なるユーザー層をターゲットとしてすみ分けるとの認識を示した。

ソニー R&Dセンター 統合技術開発第2部門 知的アプリケーション技術開発部の高松慎吾氏
Prediction Oneでは、まず実績データを読み込ませて機械学習を行う。実績データは表形式のデータで、実用的な結果を得るにはおおよそ100件以上のデータを学習させる必要があるとする一方、「実際にはやってみないと分からないことも多い」(高松氏)とし、「簡単に使えるPrediction Oneであればとりあえずやってみて、結果を見ながら調整を加えるような場合にも使いやすい」とした。
また、Prediction Oneはクラウド提供ではなくローカルのPC上で稼働するアプリケーションとして提供される。この点もデータをクラウドに置くことに対する懸念やデータ転送に要する時間、コストといった要因が利用の障害にならないように配慮した結果だという。
なお、Prediction Oneは既にグループ各社で利用されているという。SREホールディングス(旧ソニー不動産)での活用実績を紹介したSRE AI Partners 取締役の角田智弘氏は、過去に問い合わせがあった顧客のリストから、改めて連絡した場合に契約確率が高いと思われる顧客を抽出する作業について、従来は営業担当者による手作業で月間1000人を抽出するのに8時間以上(顧客1人当たり30秒)を費やしていたが、Prediction Oneでは1000人の抽出が13分で完了し、大幅な作業時間の削減効果が得られたと紹介した。

Prediction Oneの画面イメージ(提供:ソニー)。1行1レコードで、カラムとしてさまざまな属性が並んだ形式のデータを読み込み、学習させたいカラムと、予測結果としたいカラムを指定するだけで、自動的に機械学習が行なわれる。結果の出力の際には、どのカラムが予測結果に寄与しているのか、を情報として確認できるため、よく言われる「ブラックボックス」ではなく、ある程度判断の根拠が分かるようになっている
Prediction Oneは、まず法人向けに無償提供される。利用を希望する場合は、同社サイトに用意されたフォームを使って申し込む。将来的には有償化も検討しているというが、現時点では未定。有償化の際にはウェブ上で情報を発表する予定だという。