勤務先のテレワーク許可率は24.3%にとどまり、64.1%が禁止。その他は11.6%だった。2018年の許可率は21.8%だったことを踏まえると、テレワークの浸透は始まったばかりと言わざるを得ない。
働き方改革関連法が長時間労働の是正に有効か尋ねると、はい(36.8%)、いいえ(25.3%)、どちらともいえない(32.2%)、分からない(5.8%)という結果だった。同法が段階的施行、この4月から施行したばかりであることで理解が深まっているとは言えない状況だ。
同法の疎外する要因について尋ねると、企業文化・経営者の意識(67.2%)、本人の意識(43.4%)、業務量(39.5%)、デジタルデバイスやサービス(9.1%)という回答が浮き彫りになった。企業内の変革はつまるところ経営層の決断をトップダウンで下す必要性があることを改めて明確になっている
米本社VMwareがグローバルで実施した「The digital employee experience survey」によれば、社員のデジタル体験に対する肯定的な回答比率は米・英・独・日の4カ国中、日本が最下位。従業員が企業へ“どこでも働ける環境を提供してほしい”という要望も同じく最下位で、テレワーク意識調査と同じく消極的な姿勢が浮き彫りになった。
本田氏は「それでも先進的な企業は国内にある」と述べながら、ニトリホールディングスの導入事例を披露。ニトリはMicrosoft Azureから仮想デスクトップを提供する「VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure」を採用し、在宅でWindows環境を利用するテレワーク環境を構築した。
「オンプレミスで仮想デスクトップ基盤(VDI)を導入するよりも、(クラウドの方が)初期費用や構築時間を抑止できる。スケールアップやスケールダウンも容易なためコスト最適化も可能」(本田氏)

テレワークマネジメント 代表取締役 田澤由利氏
このようにテレワークの普及は微増ながらも、「日本企業の4社に1社がテレワークを導入する時代。(テレワークの浸透は)加速している」と語るのはテレワークマネジメント 代表取締役 田澤由利氏。田澤氏はテレワークに関わるコンサルティング業務に務めており、総務省の通信利用動向調査によるテレワーク導入企業が2%という時代から携わってきた。
田澤氏の独自調査によれば、2013年からテレワークというキーワードがメディアに露出するようになり、「この年は第2次安倍内閣発足が発足している。所信表明にもテレワークが登場した」(田澤氏)ことから加速的に増加。2020年東京五輪開催に伴って、交通混雑緩和に伴う時差出勤やテレワークが今後1年間重要になると推察する。
他方で日本企業には“テレワークの壁”が依然として存在すると指摘。そこには、「必要性を認識する壁」「テレワークを導入する壁」「テレワークの効果を出す壁」「当たり前の働き方にする壁」と段階的な壁が存在し、以前はテレワーク導入相談が多かったが、最近は導入後の効果向上に伴う相談が多いという。
その上で“当たり前の働き方”を前提に組織を作るスタートアップが続々と登場する日本社会に対して、「変わらない既存企業は生き残れない」(田澤氏)と警鐘を鳴らす。日本企業がテレワーク時代に追従、もしくは対応するためには、「『テレワークでできる仕事は限られている』と思い込んでいる。今の仕事をリモートワークで実行する意識を企業が持つべきだ。発想の転換が必要だと感じている」(田澤氏)と指摘した。