農事組合法人吉浦牧場(島根県)の分場、世羅つくし分場(広島県)では、正確かつ素早いコミュニケーションを実現すべくビジネスチャットツール「WowTalk」を導入。病気や分娩などの緊急時でも確実に情報共有できるようになったという。8月15日、WowTalkを開発、提供するワウテック(中央区)が発表した。
吉浦牧場は、年間1万3600トンの生乳を出荷する酪農業、牛のフンから作った堆肥を利用した野菜づくりをする農業などを事業としている。同牧場の世羅つくし分場では、58ヘクタールという土地で約1200頭の牛を育成しており、牛の体調管理から分娩介助までを約20名のスタッフが持ち回りで対応しているという。
同分場では、その土地の広大さならではの課題を抱えていたという。スタッフ間で迅速なコミュニケーションを図りたいが、最適解を見いだせていなかった。これは、“牛の生命”に直結する課題でもある。
牛の分娩では、情報の伝達ができずに対応がたった数分遅れるだけで、親牛や子牛を死なせてしまうこともあるという。1頭あたりの経営上の影響は非常に大きく、牛を健康に育てることは経営に直結することから、伝わったかどうかの即時把握、テキストでは伝えにくい情報の伝達、外国人スタッフとのコミュニケーションなど、正確かつ効率的、素早い情報共有が必要だったとしている。
WowTalkでは、責任者が全端末のアカウントを発行するため、他の個人向けチャットアプリのように個人アカウントをビジネス版と紐付けて利用する必要がなく、効率的な管理が可能。
操作性は普及している個人向けチャットアプリに近く、導入後は教育不要で全員が活用。既読、未読の確認に加え、テキスト情報として記録されるため、情報伝達後の「言った/言わない」のような食い違いも解消。親牛の分娩介助のような複雑な業務は写真や動画で共有できるという。
外国人研修制度やエンジニアで来日する外国人スタッフは、日本語での基本的なやり取りでほとんど問題はないが、緊急時などは英語の方が素早く対応できる場合が多いという。翻訳機能でニュアンスの汲み取りが可能になり、スタンプでカジュアルなやり取りも活性化。以前よりもコミュニケーションが取りやすくなったとしている。
吉浦牧場の理事、獣医師の田村勇耕氏は、「今まで先輩たちの知見は経験を通して学ぶというのが業界的には常識とされていたが、このように言語や写真データで残すことによって、そうした従来の文化を改善していくことにつながると思う」とコメントしている。
世羅つくし分場と田村勇耕氏(出典:ワウテック)