本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NTTデータの木谷強 取締役常務執行役員と、米GartnerのJay Heiser バイスプレジデントの発言を紹介する。
「エンタープライズシステムのクラウド移行はこれから本格化する」
(NTTデータ 木谷強 取締役常務執行役員)
NTTデータの木谷強 取締役常務執行役員
NTTデータの木谷氏は、日本オラクルが先頃、都内のホテルで開催したプライベートイベント「Modern Cloud Day Tokyo」の基調講演でパートナー企業としてスピーチした。同氏の冒頭の発言はその際に、エンタープライズシステムのクラウド移行に向けてのNTTデータの捉え方を示したものである。
木谷氏によると、NTTデータが2018年度(2019年3月期)に手掛けたシステム開発プロジェクトの件数における割合で、クラウドを活用したケースは5%にとどまり、95%がオンプレミス環境だった。
この結果に同氏は、「エンタープライズシステムのお客さまは、クラウドの採用には慎重だ。とはいえ、当社としてもシステムが大規模でミッションクリティカルであっても、クラウドへの移行はもう避けられないと見ている」と語り、その後に続けたのが、冒頭の発言である。
ミッションクリティカルなシステムの多くは「Oracle Database」を利用しており、NTTデータにおいてはOracle関連ビジネスの取り扱い額が年間100億円以上に達するという。同氏は「これまではOracle関連ビジネスもオンプレミス環境がベースだったが、今後はクラウドに移行していくだろう」との見方を示した。
ただし、「ミッションクリティカルなシステムでは、要件の厳しいデータベースがクラウド移行の障壁となる可能性が高い」と木谷氏は指摘。そして、クラウド移行における課題として「非機能要件を注視していかなければいけない」とし、「可用性」「移行性」「性能・拡張性」「システム環境」「運用・保守性」「セキュリティ」といった6つの「非機能要件」を挙げた。図1には、それぞれのポイントが示されている。
クラウド移行における課題
同氏によると、この6つの非機能要件を踏まえて某金融案件における適合性評価を行うため、日本オラクルのデータセンター(東京リージョン)を前提とした机上評価、および海外リージョン環境で実機評価を実施したところ、「要求に対する充足性を確認した」という。
最後に同氏は、NTTデータのクラウドの取り組みとして図2を示した。この図のポイントは、下段に記されている他社のクラウドサービスとの連携だ。今回は日本オラクルのイベントでのスピーチなので「Oracle Cloud」が目立つように記されているが、要はマルチクラウドが前提ということだ。それも含め、この図はITサービス国内最大手のクラウドソリューションの全体像がシンプルに描かれており、興味深いところである。
NTTデータのクラウドの取り組み