パーソルグループは10月23日、“変革の時代における人材・組織マネジメントのアップデート”をメインテーマに掲げた「パーソルカンファレンス」を都内で開催した。ここでは、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏と、パーソル総合研究所 コンサルティング事業本部長 佐々木聡氏が登壇した講演「人事データ活用がもたらす組織イノベーションとは?-HRテック最新トレンドとピープルアナリティクス最新事例」を見てみる。
自己超越欲求で変化するHR市場
人事業務にテクノロジーを用いる“HRテック”では、2010年代からグローバルで“人的資本管理(Human Capital Management:HCM)”アプリケーションの開発が始まった。それに伴いHRテック系スタートアップへの投資額も急増し、CB Insightsの調査によれば、2012年時点で5億ドル(約500億円)程度だったものの、2017年には30億ドル(約3000億円)を突破。2009年から2018年までの累積額は160億ドル(約1兆6000億円)に及ぶ。
活況を呈するHRテック市場だが、HCMアプリケーションは「各種領域に特化しているため、分類は難しいものの、区分すると二十数種類に分かれる」(岩本氏)
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏
他方で2014年ごろから各種データを統計解析し、戦略的な人事や経営の意思決定や業務効率化などに活用する“ピープルアナリティクス”に関するカンファレンスが欧米を中心に開催され、盛り上がりを見せていると岩本氏は解説する。
ピープルアナリティクスの技術進化はHCMアプリケーションにも相乗効果を及ぼし、ピープルアナリティクス機能を実装することで提案、助言するHCMアプリケーションが活用されるとともに「HRテクノロジー部」「HRアナリティクス部」などピープルアナリティクス部門を設ける大企業も急増しているという。
人事データの活用で得られる価値として岩本氏は、「データに基づいた理論的、定量的な議論を可能にし、データ活用で新たな付加価値を生み出す」と強調。一例としてOracleがグローバルの10の地域を対象にした調査結果を引用した。
同調査では、人間のマネージャーとロボット(AI)のどちらを信用するかという設問があるが、回答者のうち65%がロボットを信用するという。それだけ社内の上下関係にバイアスが存在し、「上司の指示に納得していない人が多い」(岩本氏)と見ることもできる。
日本の回答も70%がロボットを信用すると回答し、経営人事に関するAI活用も10カ国中最下位。「人事管理が体系的になされていないことを示している」(岩本氏)