“チャット”の再定義が必要--ズームCIOが考えるコミュニケーションの今

藤本和彦 (編集部)

2019-11-26 07:00

 Zoom Video Communicationsは、米国カリフォルニア州サンノゼに本社多くIT企業で、ビデオを中心としたコミュニケーション基盤をSaaSで提供している。2018年に日本法人を設立し、国内での展開を本格化させている。

 Zoomはビデオ会議や音声通話、チャットなどの機能を統合した形で提供する。PCだけでなく、タブレットやスマートフォンからでも使える点が特徴の一つで、独自の圧縮技術で低帯域でも安定した通信が可能になっているという。

 今回は、同社で最高情報責任者(CIO)を務めるHarry D. Moseley氏にビデオコミュニケーションの現状や同社のサービスについて聞いた。

Zoom 最高情報責任者(CIO)のHarry D. Moseley氏
Zoom 最高情報責任者(CIO)のHarry D. Moseley氏

世代で見るコミュニケーションの変遷

Moseley氏:まずはこれまでのコミュニケーション方法を振り返ってみよう。ビジネスのコミュニケーションツールといえば、電話と電子メールの2つが主流だったが、効率的な手段ではなかった。

 音声だけでは、相手がどのような表情をしているのか、どのような身振りや手振りをしているのかを知ることができない。相手と真のコミュニケーションを取るには対面するのが理想だが、場所や時間を合わせないとならない。それもまた効率的であるとは言えない。そうした課題を解決するのがビデオコミュニケーションだと考えている。

 近い将来、ミレニアル世代とZ世代が世界の労働人口の3分の2を占めるようになる。彼らにとってモバイルデバイスやインターネットは当たり前のものであり、時間や場所に拘束されたミーティングを効率的だと思っていない。“コネクト”や“チャット”という言葉の再定義が必要になる。

 例えば私が子どもの時代、チャットは電話などでおしゃべりをするという意味しかなかった。それが今の子どもの世代では言葉の定義が大きく変わっている。テキストや音声、ビデオなど、さまざまな方法を使って個人同士や大人数でコミュニケーションするのが、彼らにとっての再定義されたチャットになる。

 人とつながる(コネクト)という意味では、音声やビデオだけでなく対面しているかのような体験が求められている。また、ミーティングをしたいと思えばすぐに人とつながれるといった高い即時性が必要とされている。

 Zoomは、場所や時間に関係なく、どの端末からでもすぐにアクセスできるビデオコミュニケーション環境を提供する。人にストレスを与えないビデオプラットフォームと言える。コミュニケーションは世界共通のものであり、顧客ニーズは市場を問わないと見ている。コミュニケーションのための素晴らしいプラットフォームがあれば、会社も人も成長し、イノベーションを加速させることができる。

Zoomの強みと差別化ポイント

 最近追加された新機能としては、ビデオ会議の音声からトランスクリプト(文字おこし)を自動で作成する機能(日本語は未対応)が挙げられる。従来は議事録の作成に手間暇をかけてきたが、この機能を使えばミーティングをしながらリアルタイムに作成できる。また、同時通訳の配信機能にも対応した。通訳者用に言語ごとの音声チャネルを設けることで、多言語への同時通訳を可能にする。

 他サービスとの統合も強みの一つだ。ServiceNowやSalesforce、LinkedInなどとの連携が可能だ。例えば、面識のない人とのミーティングであっても、LinkedInのプロフィールを参照して理解を深めることができる。

 Zoomは世界に17のデータセンターを持っており、ユーザーから物理的に最も近くにあるデータセンターが選ばれるようになっている。それによってレイテンシー(遅延)を最低限に抑えている。また、独自の圧縮技術により、45%のパケットロスが発生してもミーティングに支障をきたさないように動作可能となっている。

 これは、デバイスやネットワークの状況をリアルタイムに監視・解析し、エンドポイントごとに環境を調整して最適な状態を保つようにしているためだ。管理ツールからユーザー情報やメトリクスなどを監視でき、会議参加者の端末ごとに通信状態やCPU使用率、マイク、スピーカー、カメラなどの状態などを確認できる。

 顧客はパートナーであり、製品やサービスに対する要望を大切にしている。顧客の成功のためには、どのような機能が必要なのか、ニーズやペインを探りながら開発を進めている。

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