デジタルプロセスオートメーション(DPA)や顧客エンゲージメント(CRM)ソフトを手掛けるPegasystemsは、1983年に米国で創業。ビジネスプロセス管理(BPM)の老舗ベンダーとして世界30カ国に拠点を構え、従業員数は5000人を超える。2011年にペガジャパンを設立し、国内展開を本格化させている。日本法人の代表取締役社長には、アクセンチュアで保険業界向けのソリューションを統括していた渡辺宣彦氏が2014年3月に就任した。
同社の主力製品は「Pega Infinity」になる。渡辺氏によると、「DPAとCRMをエンドツーエンドで統合したデジタル変革(DX)のためのソフトウェアスイート」という。CRMとDPAを1つの基盤に乗せている点が特徴のようだ。
製品ポートフォリオを列挙する。まずCRM領域では、「Marketing」「Sales Automation」「Customer Service」「Customer Decision Hub」がある。DPA領域では、「Robotic Automation」「Workforce Intelligence」「Pega Platform」がラインアップされる。その共通基盤として「Pega DX Architechture」がある。
人工知能(AI)やRPA(ロボティックプロセスオートメーション)といった技術も取り込まれており、よりパーソナライズされた顧客エンゲージメントやカスタマージャーニーの自動化を可能にする。ノーコード/ローコード基盤としての側面もあり、ビジネスのスピードに合わせたアジャイルな開発を支援する。
「(デジタルビジネスでは)顧客接点から業務プロセスが始まり、結果が出るところまで捉えないといけない。従来は、顧客管理やワークフロー、基幹システムなどがバラバラに存在し、つぎはぎの状態になっていた」と渡辺氏は話す。Pega Infinityは、従来のBPMとルールエンジン、ロボティクス、人工知能を組み合わせ、エンドツーエンドで業務プロセスを効率化するものだと説明した。
なお、PegasystemsはGartnerによるインテリジェントビジネスプロセス管理(iBPM)部門のマジッククアドラントでリーダーに位置付けられているほか、顧客エンゲージメントやローコードアプリケーションプラットフォームなどの領域でも高い評価を得ているという。渡辺氏によると、最近ではRPA基盤としての引き合いも増えているという。MM総研が発表した調査結果でも上位にランクインした(参考記事)。
渡辺氏はグローバルの顧客事例として、クレジットカード事業を手掛けるAmerican Express Companyを挙げた。同社は世界で1万2000人のオペレーターが利用するコールセンターのカスタマーサービス基盤をPegasystemsのプラットフォームで構築し、年間2億件の問い合わせに対応し、180種類の業務プロセスを処理しているという。
その他にも、Royal Bank of Scotland(RBS)やCommonwealth Bank of Australia(CBA)といった金融機関がデジタルマーケティングや顧客サービスの領域で利用しているという。
国内では、金融業界での導入が多いと渡辺氏は話す。東京海上日動やAIGジャパンなどの企業から導入が広がり、最近ではSAPユーザーがフロントシステムとして導入するケースもある。
直近では、SOMPOひまわり生命保険が導入を決めた。Pega Infinityのローコード開発基盤を使ってネット申込専用商品の申込・契約管理システムを構築。システム開発の期間を従来の2分の1に短縮し、開発コストを6分の1に削減した。
「保険ビジネスの成否は、商品の迅速な市場投入やコスト構造の改善で決まる。今回はその両方を実現した事例になる」(渡辺氏)
ペガジャパンでは、今後も金融向けソリューションを拡充していく計画。リアルタイムなマーケティングインテリジェンスやシームレスなオムニチャネルサービス、引き受けプロセスの合理化、本人確認・顧客ライフサイクル管理(KYC/CLM)などを提供する。
また、今後の事業戦略としては、業務プロセス効率化と顧客エンゲージメント向上の2軸で体制を強化していく。金融業界の他にも、製造・通信・公共業界向けの専任チームを立ち上げ、各業界に特化したソリューションを展開していく。