岩手県久慈市とNTT東日本岩手支店が、久慈市でのふるさと納税業務などに適用したRPA(ロボティックプロセスオートメーション)とAI-OCR(人工知能技術を用いた光学文字認識)の効果を紹介している。
この取り組みは、2019年11月27日から実施している。RPAソフトはNTT アドバンステクノロジの「WinActor」、AI-OCRはAI insideの「DX Suite」を使用している。2課の3業務(ふるさと納税処理、市県民税収納、アンケート集計)を対象として、システムへの転記作業などの自動化と帳票のデータ化を目的に、RPAとAI-OCRによる職員作業時間の削減効果を測定した。
まずふるさと納税処理の業務は、年間約2万件の納付があるという、ふるさと納税の「ワンストップ特例申請書」に基づくシステムへの転記作業になる。紙の申請書の内容をAI-OCRで読み取りCSV形式のファイルでデータ化し、RPAがシステムに転記する。最後に人がチェックする。ここでは職員作業時の19.8時間から4.2時間に短縮され、削減率は約78%だった。年間では190時間の削減になるという。
市県民税収納の業務は、紙の納税済み通知書の内容を同様にAI-OCRとRPAでシステムに転記し、人がチェックする。しかし結果は、職員作業時の1.6時間から16.2時間と8.3倍に増加してしまい、AI-OCRとRPAの導入効果はなかった。入力内容のミスが許されず目視チェックを徹底する必要性から作業時間の短縮はほとんどできないことが分かった。
アンケート集計ではAI-OCRのみを使い、73時間から12.2時間に削減された。ここでは多数の対象データがあると、転記ミスが集計結果に及ぼす影響が限りなく低いと想定され、内容を読み取る際のミスやその修正にも時間を費やす必要が減り、AI-OCRの利用効果が高いとしている。
適用前後の効果比較、アンケート集計はAI-OCRのみ使用した。ふるさと納税処理と市県民税収納では正反対の結果になった(出典:NTT東日本岩手支店)
現在までに確認された点は以下の通りという。
- AI-OCRはアンケート集計業務では一定の効果を発揮する
- 入力に対する確認が必須の業務(収納業務など)では、確認稼働の観点で作業時間が増える場合がある
- AI-OCRは業務の特性によって効果の有無が極端になる傾向にあるので、業務選定が非常に重要
- RPAを利用した業務において業務効率化に寄与できているため、スキームが類似した業務では広く応用可能
久慈市によれば、特にアンケート集計業務は、AI-OCRでアンケート用紙の内容を読み取る作業は庁内でなければできないものの、データ化後の作業工程は全てテレワークで処理できるという。導入前の作業時間の約5%とした場合、導入後はテレワークの併用で作業時間を最大95%削減可能と試算している。