Anaplanジャパンは5月28日、報道機関向けのオンライン説明会を開催し、新型コロナウイルスの流行を受けた同社の取り組みについて説明した。
社長執行役員の中田淳氏はまず、同社の社名の由来が「Analytics+Planning」であることを紹介し、「企業や組織が行うあらゆる計画業務を幅広くサポートするクラウドソリューション」であると同時に、「SaaSではあるが、その上にさまざまなアプリケーションを実装できるPaaSという方が実態に近い」と説明した。
Anaplanの概要
実際に、Anaplanのプラットフォームを活用して具体的なアプリケーションを構築するためのアプローチとしては、Excelといった既存業務のイメージを温存したままAnaplanアプリをスクラッチで構築する「スクラッチアプローチ」、Anaplanが提供する各種アプリでクイックに業務をスタート可能な「テンプレートアプローチ」、Anaplanが提供する各種アプリを自社に合うようにカスタマイズ可能な「カスタマイズアプローチ」の3つがある。
日本のユーザーが好むのは圧倒的に「スクラッチアプローチ」で、おおよそ国内ユーザーの8割ほどが同手法でAnaplanを活用しているという。しかしながら、ベストプラクティスを迅速に活用するテンプレートアプローチには、これまでに自社で経験がないような「前例のない状況」に対応するための有力なツールとなり得ることから、今回の新型コロナの流行を受け、同社と同社が認定したモデルビルダーなどで構成されるコミュニティーによって開発されたアプリケーションが公開・提供されているという。
Anaplanアプリケーション構築の3つのアプローチ
公開されているアプリケーションには、「Data Hub COVID-19:COVID-19関連公開データを取り込むためのデータハブモデル」といった基盤系のものから、「Bay Are Cotton Masks:マスク作成、配付、ボランティアスタッフ割り当て計画」といったより具体的な計画策定を支援するもの、「Regional PPE Consolidation:医療機関のPPE(個人用防護具)必要量と供給計画策定」「Staffing Model for Health Care Providers & Non-Profits:医療機関向け人員計画」といった医療機関の活動を支援する目的のものなどがそろっている。
なお、アプリケーション構築に携わった“Master Anaplanner”は同社のモデルビルダーの上位1%に授与される認定資格だといい、公開されているCOVID-19対応全25アプリケーションのうちの16個がMaster Anaplannerによって構築されており、日本からの参加者も2人いるということだ。
同社が“Anaplan Helps”プログラムで提供するCOVID-19対応アプリケーション(テンプレートアプローチで利用可能、全25種)の一部
続いて、ソリューションコンサルティング マネージャの大場達生氏が、COVID-19対応アプリケーションのデモンストレーションを行った。「急激な需要変動対応(サプライチェーン)」「緊急事態宣言配下/後の従業員配置計画(人事/労務)」「資金繰り/キャッシュポジション計画(ファイナンス)」という3つのデモシナリオが紹介された。
例えば、サプライチェーンでは、実際に起きたトイレットペーパーの需給ひっ迫などのように通常とは違う瞬間的な需要増大が生じたり、あるいは商品が全く売れなくなってしまったりといった状態に対応して、Anaplanプラットフォーム上でさまざまなシミュレーションを行いつつ、サプライヤーとも連携して最善の対応を探る、といった使い方が可能という。
東京都では当初、新型コロナ感染者数の集計を各保健所から手書きのファクスによる“発生届”で行われており、国際的な注目を集めるような状況もあったが、Anaplanが支援するのはまさにこうした「単純な集計部分で膨大な労力を要してしまう」状況の合理化であり、人の知見やノウハウが求められるモデルの精査やシミュレーションのパラメーター調整などのより高度な作業にリソースを振り向けられるようにすることだ。
誰もが想定外であった新型コロナの流行によって、さまざまな作業で泥縄式の対応が余儀なくされ、あちこちで不効率や時代錯誤ともいえる業務プロセス、不合理な慣行などが浮き彫りになっている状況だ。同社のプラットフォームは、こうした経験を次に生かすためにも有用だと思われる。