イランでは新型コロナウイルスが急速に拡大し、ウイルスの蔓延に関する情報を収集するために開発されたアプリが必要以上に個人情報を収集していたことがわかり、Google Playストアから削除された。アプリを開発したグループは、イラン政府のためにほかにも怪しいアプリを開発している。
例えば、イランで人気なメッセージングアプリは暗号化を壊すのが難しいため、代わりとなる安全ではないメッセージングアプリを設計し、政府が国民にスパイする手助けをしていた。
フェイクニュースとの戦いと同じように、悪意のあるアプリと戦うには信頼できる情報源に依拠することが大切である。ショートメッセージサービス(SMS)やSNSを通して送られたリンクや情報は、信頼しない方が良いだろう。
疑問を感じた場合は、個人情報にアクセスする可能性があるアプリをインストールするのではなく、まずはアプリが提供しているものと同じサービスや情報を、ウェブサイトから入手しよう。
ロシアは、新型コロナウイルスへの本格的な対策を取るのが遅かった。それどころか、安全対策とはまるで反対のことを行い、国民は政府が公表する情報を信頼できずにいる。ロシア政府は、反政府デモを含むであろう大規模集会を都合よく禁止した一方、サッカースタジアムが満員になることは許可し、3月16日には1000人以上のゲストが集うチェスイベントさえも許可している。
ロシアは当初、新型コロナウィルスに関して低い数値を公表しており、ロシア政府は予防措置と検査体制の成功を豪語していた。筆者は、彼らの数字はでっち上げだと思っていた。権威主義体制は常に、情報操作をして現実を歪めるからである。
しかし、武漢の時のように、こうした情報操作のファサードは突き破られる。政権の数週間にわたるプロパガンダは、ロシア人だけでなく、多くの命を犠牲にするだろう。公的な統計に不備があるような地域と同様、あまりにも長い間、ロシアからのフライトは禁止も検査もされていなかったのだ。
データは、目に見えない病気と戦う上では強力な武器になる。コネクテッドサーモメーターは病院よりも早く地域的な流行を検知することができ、GPSの履歴を分析して感染者の場所や移動を追跡すれば、感染者とすれ違った人に警告を出すことさえできる。
こうした取り組みを既に実施している地域もある。それでは、外出が自粛できていない時、またはソーシャルディスタンシングが実施できていない時にアラートを出してくれるアプリは、どうだろうか。生死に関わる問題になると、私たちは当然、個人のプライバシーを軽視する傾向にある。
しかし、だからといってプライバシーを無視してはいけないのだ。
既に独裁者は、より多くの権力を掌握するためにウイルスを利用している。ハンガリーは議会と選挙を停止し、トルコとブラジルは必要性と安全性を主張して、ジャーナリストや活動家の取り組みに対して取り締まりを強化している。
地域の自治体は反発しているものの、ウイルスを口実に民主主義に圧力がかかっていることは明らかだ。より民主主義の体制が整った国家でも、安心はできない。