企業がデジタルワークスペースを確保するために必要な「監視」の役割とは

河村浩明 (ソーラーウインズ・ジャパン)

2020-06-17 06:00

 昨今では、日常的に利用しているITリソースや重要なビジネスアプリケーションに対して、時間や場所を問わず、どのデバイスからでもアクセスできることが求められています。しかし、人々の健康を脅かす危機が世界中で拡大している今、リモートワークの推進は、瞬く間に「推奨」から「義務」へと変化しました。

 新型コロナウイルス感染症は、政府や自治体からの要請事項が全て解除された後も、企業の運営に対して永続的に影響を及ぼす可能性があります。実際に、Twitterや日本のドワンゴなどの企業は、新型コロナウイルスの収束後も、希望する社員に今後も在宅勤務を認めることを発表しています。さまざまな業界でイベントへの出展や参加のビジネス価値が再定義され、今後は、柔軟な働き方への対応に伴い、ウェブ会議が新たな標準になることが予想されています。では、この転換期に、ITはどのようにして企業をサポートできるのでしょうか。

 現在、機動性と生産性を向上するための柔軟性に富んだエンドユーザーエクスペリエンス(以下、UX)を提供する上で、総合的なデジタルワークスペースを確保することが非常に重要となっています。デジタルワークスペースを確保できると、原則としてさまざまなSoftware-as-a-Service(SaaS)アプリケーションやウェブアプリ、ビデオ会議、モバイルツールを一元化されたクラウドプラットフォームに統合し、管理が容易になります。

 しかし、世界的なロックダウンによりITサービスへの負担が増大している中で、ビジネスにおけるデジタルワークスペースを確立するためには、企業とITプロフェッショナルの双方が考慮しなければならない重要な点が幾つかあります。

業務のみならず、働き方の劇的な転換も

 企業やITプロフェッショナルは、今日の働き方の転換で新たに求められるUXについて考える前に、まずソーシャルディスタンスによって生じる文化的側面での劇的な転換についても認識することが重要です。

 従業員は、オフィス以外の場所においてもオフィス環境と同様に業務を遂行できるような、使いやすく構成可能なプラットフォームにアクセスできなければ、生産性を維持することはできません。ビジネスの稼働を維持するためには、コミュニケーションや調整、協力を促す適切な手段を提供することが不可欠な要素となります。

 この目標を達成する上で課題となるのは、ITプロフェッショナルがビジネスのコミュニケーションを駆使しなければならない点です。デジタルワークスペースを開発することにより、これまでサイロ化していたソリューションを実行する際に、従業員やITプロフェッショナルが直面していた複雑さや問題を解決することができます。さらに、今後ITは一層、日常の業務の中に定着していくため、適切なトレーニングや管理、サポートを提供できれば、ほかの事業部でも、さらに理解しやすいコミュニケーションを図ることができるでしょう。また、ITプロフェッショナルが企業からの承認を確実に得るためには、信用できる発言力を身につけることが不可欠となります。

 ビジネスにおいて“体験”の質は、リアルタイムの可視性に左右されます。デジタルワークスペースを整えることで、現在分散しているツールを集約し、リモートワークや柔軟な作業を可能にする1つのクラウドベースのプラットフォームに統合できるため、場所を問わず、あらゆるデバイスからアクセスできるようになります。これを実現するために重要なことは、企業やITプロフェッショナルが、アプリケーションのパフォーマンスを完全に可視化することです。そうすることでパフォーマンスの低下が軽減され、エンドユーザーの求める体験の質が向上し、フラストレーションが緩和され、生産性が向上します。

 また、リアルタイムの実用的なインサイトを伴う、適切な監視の実践とプロセスを確立することも必要不可欠です。現在はCisco Webex、Microsoft Teams、Zoomなどのコラボレーションツールへの需要が急速に高まっています。これらのSaaSソリューションでは、容量や負荷の問題についての情報はあまり得られませんが、監視ソリューションを利用すれば、プラットフォームと接続性の問題を区別することができます。

 適切な監視ツールを活用することで、リアルタイムな分析と応答の性能を高めることができ、単一のプラットフォームを通じて、集約されたデジタルワークスペースの可視化を実現します。リモートワーク環境でのアプリケーションへのアクセスについては、問題を迅速にトラブルシューティングするために、過去のベースラインに頼ることができません。今日のデジタル化の下で生じている転換において、企業が適応していくには、サービスの稼働と維持に関わる新たな複雑さを乗り越える時間が必要不可欠です。

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