また、ビジネスを成長させなければならない経営層にとって、未来の働き手やデジタルネイティブ世代に対応するとともに、デジタルによって従業員の集中力を損なうのではなく、テクノロジーを使って従業員のエンゲージメントを高めるにはどうすれば良いのでしょうか? そして、“従業員体験(エクスペリエンス)”改善という約束を実現した職場はどうやって作り出せるのでしょうか?
注意散漫がビジネスに与える影響とは?
現代の職場において、私たちが職場で使用するすべてのアプリケーションとそれによる絶え間ない集中の中断やアプリケーションの切り換えに伴う時間の浪費など、私たちのテクノロジー中毒はビジネスに多大な影響を与えています。
従業員は1日で平均6個から10個のアプリケーションを切り換えていると推定されます。勤怠管理や営業管理などアプリケーションを切り換えるたびに5分から10分が無駄になっていると思われます。
1日に10回アプリケーションを切り換えるとすれば50〜100分が失われ、またアプリケーションの起動を待つためにさらに20〜50分が無駄になっていることになります。現代の職場環境においてはこの時間のうち90%は回避可能なものであり、それによる従業員1人あたりの生産性向上は年間最大1万5000ドルにも達すると考えられます。
企業の多くは、各従業員それぞれの作業に最も適したアプリケーションを調達するという課題を抱えています。新しいアプリケーションの提供には6〜12カ月の開発期間とさらに6カ月の展開期間が必要とされます。適切に設計されたアプリケーションはユーザーの生産性を高めることができるため、早急にそれをユーザーの手元に届けなければなりません。
新しいアプリケーションを利用することで生産性が5%改善し、6カ月ではなく、3カ月のうちにそれをすべてのユーザーに配付できるとすれば、従業員数1万人の企業での改善は300万ドルを超える水準に達します。
従業員の期待に応えるテクノロジーとは?
企業はセキュリティ保護のため、頻繁にパスワード変更を求め、また組織の多くではそれぞれのアプリケーションについて3カ月ごとに新しいパスワード登録を要求しています。これはセキュリティ全体にとっては重要ですが、エンドユーザーの生産性を大きく妨げてもいます。
10個を超えるアプリケーションごとのパスワードが求められるのではなく、ひとつのパスワードを変更するだけですむシングルサインオン(SSO)を導入すれば、このパスワード変更に伴う生産性の低下が解消されることによって100万ドルを超える節約が実現します。
またSSOへの移行で、IT部門はパスワード変更に伴う問題に対処する必要がなくなり、パスワードを忘れたときのためのヘルプデスクも不要になるので、500万ドルを超える経費節減が可能になります。
「検索」も1つの要因です。仕事に必要な情報の検索だけで平均的に1日の時間の15%から20%を費やしていると推定しています。より高度な検索オプションによって検索作業の生産性を高めれば、検索に費やす時間は少なくとも半分に短縮され、従業員数1万人の企業での節約額は300万ドルに達すると考えられます。
場所に縛られない働き方を実現したテクノロジーですが、次の課題はより従業員が注意散漫にならないIT環境の提供であり、これはIT部門の課題だけではなく、IT部門と人事部門が協力して解決する問題です。
- 國分俊宏(こくぶん・としひろ)
- シトリックス・システムズ・ジャパン セールスエンジニアリング本部 金融SEグループ リードシステムズエンジニア
- グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセールスとして支援している。現在は、金融グループのリード・システムエンジニアとして、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に紹介している。