IBMは米商務省に対し、顔認識システムの輸出を制限するよう要請した。特に、大規模な監視や人種プロファイリング、人権侵害に顔認識システムを使用する可能性のある国への輸出制限を求めている。
IBMは商務省宛ての書簡の中で、「1対多」照合を実行する顔認識技術の輸出規制を強化する必要性を示した。
同社が要請しているのは、データの収集に使用される高解像度カメラと、データを分析して画像のデータベースと照合する際に使用されるソフトウェアアルゴリズムの輸出規制、1対多の顔認識システムの訓練に使用可能なオンライン画像データベースへのアクセス制限だ。
IBMで政府や規制に関する問題を担当するバイスプレジデントChristopher Padilla氏はブログ記事で、「これらのシステムは、スマートフォンのロック解除や飛行機への搭乗許可で利用する『1対1』の顔照合システムとは異なる。1対1の場合、同意した個人の本人確認のために顔認識が使用される」と説明した。
「しかし、『1対多』の顔認識では、例えば、1つの画像をデータベースの多くの画像と照合することで、群衆の中から個人の顔を抽出できる」
IBMは、同意の下で提供されたデータだけを使ってシステムを訓練する必要性も示した。
「このデータがないと、顔認識システムは機能しない。オンラインソースのそうしたデータへのアクセスを規制することは、特定の人権侵害を抑制する効果的な手段となるかもしれない。訓練用データへのアクセス制限は、顔認識システムを使用して、大規模な監視や『1対多』照合を実行する機能を制限する有効な手段となりうる」(同社)
IBMは、ワッセナーアレンジメントのような多国間協定を導入し、国際的に協調して「抑圧的な政権」がこれらのテクノロジーにアクセスする機能を制限することも提案した。
IBMは6月、汎用の顔認識テクノロジー市場から撤退することを明らかにした。このテクノロジーが差別や、人種に基づく不当な措置の促進に用いられていることを懸念していると述べていた。
最高経営責任者(CEO)Arvind Krishna氏は、議会幹部らに宛てた書簡で、「IBMは、集団監視や、人種を観点にした分析、基本的な人権や自由の侵害のほか、われわれの価値観や、信頼と透明性の原則に一致しない目的のために利用される、他のベンダーらによって提供されている顔認識テクノロジーを含む、あらゆるテクノロジーの利用について断固として反対するとともに、その使用を許容しない」としていた。
米国ではサンフランシスコやオークランドなど複数の都市で、顔認識技術の利用を制限する動きがある。欧州連合(EU)でも公共の場での顔認識技術の使用を一時的に禁止することが検討されている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。