欧州評議会のデータ保護に関係する委員会の議長が共同で声明を発表し、世界の諜報機関などは、各国政府が個人情報を監視目的で悪用することを禁じる権限を持った国際機関によって抑制されるべきだと述べている。
声明では、諜報機関に与える監視に関する権限の範囲や、監視の実施が許される条件について、各国が国際レベルで合意すべきだと勧告している。またこの合意は、将来設立される独立したデータ保護団体が利用できる法的な拘束力を持った道具であるべきだと述べている。
欧州評議会は、国際レベルでのよりよいデータ保護への要請は、特に各国政府が合法的に市民のプライバシー権を制限できる機会を得やすい、危機の時代にこそ高まると述べている。
国家安全保障への脅威といった正当性のある懸念によって権利が制限される場合もあるが、そうした制限は、十分な安全策を備えた、バランスのとれたものであるべきであり、それを保証するための厳格な監視が必要だという。
声明では、新型コロナウイルスが現在もたらしている危機に言及しながら、市民の健康に対する脅威が、プライバシー権を妨げることにつながってしまう可能性があると述べている。
パンデミックが起きた結果、デジタルヘルスや接触追跡サービスが多くの人々の生活に浸透したが、そのことが個人情報の保護に悪影響を及ぼしているケースもある。例えば、交通監視ツールやCCTVカメラなどのさまざまな監視技術を、ロックダウンの制限解除をコントロールするために活用している都市もある。
フランスでは最近、政府があるパリの地下鉄駅で顔認識ソフトウェアに類似した仕組みを使用し、マスクを着用していない乗客に関する情報を収集する試みを行った。この取り組みは、すぐにフランスのデータ保護当局による懸念の声を呼んだが、この事例は、異例な状況にある時期には、政府がプライバシーを侵害するテクノロジーを利用する可能性があることを示している。
欧州評議会は、経済のデジタル化とグローバル化が同時に進展し、大量の個人情報が国境を越えて流れる状況になっていることを受けて、過去数年間にわたって、繰り返しプライバシー保護のための国際機関の設立を求めてきた。
例えば欧州評議会の議員会議は、2013年に米国の諜報機関が米国民や外国人に対して実施していた大量監視行為についてEdward Snowden氏が暴露して以降、プライバシーの保護を保証する国際的な法的枠組みの創設を求めている。
また、欧州評議会は、国家による監視技術の利用を一定程度規制しようと試みている。例えば2018年には、Snowden氏の暴露によって明らかになった英国政府の大量監視、データ収集プログラムが、欧州人権条約に違反していると裁定された。
今回の欧州評議会の声明を共同執筆したAlessandra Pierucciデータ保護委員会議長は、米ZDNetの取材に対して、「大量監視プログラムの発覚から数年が経過したが、データフローの文脈では、依然としてプライバシー権やデータ保護の権利の侵害を許してしまっている状況が続いている」と述べている。
またPierucci氏は、以前と同じ活動の呼びかけを繰り返し、民主国家の間で、諜報機関に許されることと許されないことに関する共通のコミットメントのための議論を続けるためには、「新たな刺激」を与えることが必要だったと付け加えた。