鹿島氏も「RPAを導入するにあたり、『ファイル名やシート名をランダムに変更しない』といった基礎的なルールは説明したが、すぐに理解していただけた」と語る。
RPAの導入効果はてきめんに現れた。導入後数カ月で月間約100時間の時間削減に成功。さらに、決算時に関する資料作成など、これまで約50時間を費やしていた作業時間がほぼゼロになった。鈴木氏は「RPAの作業量はフルタイム従業員1人分の作業量に匹敵する」と、その効果を説明する。
さらに、シナリオを作成する前に業務フローを見直して業務手順書の作成をするようになったことで、マニュアルがなく標準化されていない業務が可視化されるようになった。これにより、担当者の異動や退職に伴う業務の引き継ぎも簡単に行えるようになったと説明する。
今後は現場の担当者を集めてロボットの発表会を行うことも計画している。自動化処理の様子を実際に見せることで、さまざまな業務が自動化できることに気づいてもらいたいとの思いからだ。
現場からは「もっと導入したい」との声も
RPAを成功させるには、業務担当とロボット開発担当の役割を分担することだと言われる。ユーザー企業にIT人材が少ないと指摘される日本では、業務部門の人材だけでRPAロボットを開発することは難しい。一方、ITに精通しているシステム開発部門が業務内容や業務の関連性を理解せずに机上だけでRPAロボットを開発しても現場では使い物にならない。
「どちらか一方にすべてを任せるのではなく、業務部門とRPA専任スタッフの『二人三脚体制』で進めるのがベストな方法だ」(鈴木氏)
さらに鈴木氏は、RPA導入の副産物として「仕事のプロセスや各部署で重複している作業が可視化された」と語る。
「前述したとおり、これまでは『建設業の独自性』を理由に現場ごとに分断し、独自のやり方でやり過ごしてきたが、RPA導入をきっかけに業務の棚卸しをしたことで、全社的に標準化したほうが効率化できる部分が可視化された」(同氏)
今後もRPA導入の範囲を拡大していく予定だ。すでに現場の担当者から「こういった業務もRPAで自動化したい」という声が上がるようになった。鹿島氏は「そうした要望は、技術的に自動化が可能かどうかを確認しながら、新技術と連携して自動化を実現し、生産性向上を推進していきたい」と語る。
新型コロナウイルス感染防止の観点からリモートワークが進み、それに伴いデジタル化が急ピッチで進んでいる。同時に働き方も従来のそれとは大きく変化した。RPAがニューノーマル時代にできることは何か。鈴木氏は次のようにコメントした。
「都市開発やダムの建設といった清水建設の業務内容からみれば、RPAによる業務改善は規模が小さい(笑)。しかし、IT活用で働く環境を整えていけば、現場の改善と効率化が実現できる。人事部はRPAのような新技術のノウハウを蓄積し、(建設技術とは異なる)独自の着眼点を生かしてビジネスに貢献できると確信している」