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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国の個人コンテンツ配信に独自信用スコアが続々と導入

山谷剛史

2020-10-30 07:00

 中国では、Twitterのようなミニブログサービスや動画配信サービスに独自スコアが続々と導入されている。阿里巴巴(アリババ)系の金融企業である螞蟻金融(アントフィナンシャル)が提供する信用スコア「芝麻信用」に似ている部分はあるが、それとは全く別のシステムであり、おそらくまだ中国政府の信用データベースともリンクしていないものだ。

 これまでも、国の方針に大きく背く情報の発言や性的/暴力的なコンテンツの配信は禁止事項になっていた。例えば、「百度百科」などのオンライン百科事典では、記事執筆の禁止事項がヘルプページで明確になっている。最近の中国での“ウェブ2.0”のお作法については、まず禁止事項を明記した上でそれに違反した場合はスコアが下がり、一定の水準を下回ったらアカウントが一時凍結され、サイトにコンテンツをアップロードすることができなくなるといった形になっている。

 Twitterの模倣から始まって、大きく変化を遂げた中国のミニブログ「微博」(ウェイボー)は「陽光信用」という信用スコアを出している。最低点は300点、最高点は900点で点数により大きく5段階で評価が分かれる。

  • 691点以上:信用は非常に高い(中国語で信用極好、以下同)
  • 571~690点:信用はまあまあある(信用較好)
  • 451~570点:あまり信用できない(信用一般)
  • 420~450点:信用は低い(信用較低)
  • 419点以下:信用は極めて低い(信用極低)

 このうち、691点以上の5段階評価で最高の信用評価となると、画像付きの再投稿コメントができるという“ご褒美”が付く。ウェイボーの信用スコアでは、身分認証、内容貢献、消費傾向、社交関係、信用の5つから測るとしている。

  • 身分認証:携帯電話番号や身分証番号のほか、学歴や職歴などを入れて信用度を測る
  • 内容貢献:利用頻度や投稿数、他ユーザーからのリツイートから総合的に判断する
  • 消費傾向:消費行為の表現などから生活度合いを類推する
  • 社交関係:実名ユーザーや信用できるユーザーとつながると評価が高い
  • 信用:長期的な発言の履歴や言論の傾向を把握。よくない投稿をするとスコアが減少する

 点数を上げる手法として、まずは身分証番号をはじめ、学歴や職業などの個人情報を登録することで大きくスコアアップする。実名ユーザーの多くのフォロワーを抱えたり、毎日良いコンテンツを投稿したり、キャッシュレスの「支付宝」(アリペイ)とのリンクや紅包と呼ばれるキャッシュレスの金一封を送ったりすると、少しずつスコアが上昇する。

 一方でポルノや暴力や反国家的などの規則違反や低俗だとする他ユーザーからの通報により点数が下がる。不本意にも点数が下がってしまったアカウントを見る限り、オリジナルのコメントを多数投稿し、信用の高いアカウントとつながり、一日一善のハッシュタグで「社会主義核心価値観」などのプロパガンダが入った話題を入れて点数を上げようとしているようだ。

 ブログサービスにも信用スコアが導入されていて、ウェイボーのものとは少々異なる。中国のブログは、「百度」(バイドゥ)や「騰訊」(テンセント)などのサイトで掲載する「自媒体」と呼ばれる個人または企業が発信するニュースブログが著名だ。これに独自の信用スコアが導入されているわけだ。

 バイドゥのニュースブログに実装されている信用スコア「百家号信用分」では、100点からスタートして、何か問題があれば減点されていく。80点を切ると10点の減点ごとにアカウントがロックされる。ロックは1日で解除され、減点状態で何もなければ毎日少しずつ点数が回復していく仕組みだ。百家号のルールによれば、減点対象は次の通りになる。

  • -50点:ポルノなど他人を不快にする、虚偽やデマや消費者をだます、他者から権利侵害で訴えられて認められた
  • -20点:迷信とされるもの広める、動画において大量の字幕を出して画面を見えなくする
  • -10点:動画に大面積のモザイクや見えない部分がある、広告を掲載する、タイトルと中身があっていない、低俗な内容が含まれる、文章に関係ない情報が多過ぎる
  • -5点:タイトルが尖っていて文法がおかしい

 本文の内容とは異なるタイトルで釣ったり煽ったりせず、動画を出すとしても字幕は大き過ぎないのが健康な記事だとしているわけだ。

 中国では、ライブストリーミングやライブコマースの人気が急上昇しているが、ここにも独自の信用スコアが導入されている。アリババのライブストリーム「淘宝直播」(タオバオライブ)では次のような配信ルールがある。

  • 法律違反、反国家、ポルノ、暴力など:レベルに応じ-5点、-10点、-40点
  • うその商品紹介やキャンペーンなど:-10点
  • 他サイトやオフライン取引への誘導:レベルに応じて-10点、-40点
  • うその商品売上の表現:レベルに応じ-3点、-10点
  • ニュースの発信:レベルに応じ-3点、-5点、-20点
  • 個人情報の漏えい:-10点
  • 他人の権利侵害:-5点
  • 他者アカウントでの配信:レベルに応じ-10点、-40点

 10点減点で30日、20点減点で60日のアカウントの凍結、40点の減点でアカウント削除となる。また他のライブストリーミングの信用スコアサービスでは、減点によりトップページで紹介されにくくなる(画面表示されにくくなる)という処置を行うところもある。

 ネットにおける表現の場で、テキストや動画を問わず、独自の信用スコアが導入されたおかげで行儀の良い空間が醸成されている。その一方で本意、不本意を問わず信用スコアが下がり、頭を抱えるユーザーも少なからずいるようだ。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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