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クッキーレス時代における交換価値バランスの再調整と識別子の在り方

池田智幸 (Criteo Japan)

2020-11-26 07:00

 インターネットを使用すると「痕跡」としてデータが蓄積されます。ユーザーは日常生活でのプライバシーと同様、自身のオンライン情報についてよく理解し、データの保存や使用方法を管理、制御したいと思っています。

 オンライン上のプライバシーとその管理方法については以前から議論されてきましたが、パーソナライズされた広告の未来に関しては、現時点で対処、解決すべき重要な課題です。これまで、ユーザー、広告主、媒体主の間のオンラインエコシステムは、それぞれが異なる見解、要望、ニーズを持ち、その中でそれぞれが得られる価値の交換を行ってきました。ユーザーは、広告主からターゲティング広告が配信されるのと引き換えに無料のコンテンツを楽しみ、またそれにより媒体主は自社媒体の収益化を図っていました。

 しかし、時代は変わりました。今まで機能していた仕組みは、業界のエコシステムと個人データの保存および使用に対する信頼を失ったユーザーに、もはやメリットをもたらしません。そこには、相次ぐ情報漏えいやサイバー攻撃、そして世界中で個人情報データに関連する不正事件が重なったという背景があります。

 そうした中、あることが明確になっています。それは、Cookieやモバイル広告IDは、パーソナライズされたメッセージをユーザーに訴求するためのツールとしてはもう不十分であるということです。サードパーティーCookieは仮名化された識別子として機能しますが、ユーザーのプライバシーを優先するようには設計されていません。

 5000人を対象としたCriteoの調査では、無料コンテンツと引き換えに広告が表示されることに対し、回答者の70%が「全く問題ない」または「問題ない」と答えています。しかし、その一方で69%は、パーソナライズされた広告への嫌悪感と懸念に対する理由の上位3つの中に「パーソナライズされた広告が自分のデータプライバシーを侵害すること(共有したくない情報が使用されている)」を挙げています。

 アドテク業界はどのように誠実かつ公正で、バランスの取れた価値交換を実現できるのでしょうか。Criteoでは、エコシステム全体にメリットをもたらし、インターネットの健全な未来に不可欠となるであろう、識別子に対する4つの基本理念を特定しました。

ユーザー(消費者)中心であること

 オフラインの世界では、消費者の権利とプライバシーが最も重要です。これをオンラインにも反映することが基本であり、ユーザーは自分の権利が尊重され保護されていると知ることで安心することができます。

 その鍵となるのは、全面的なオンラインエコシステムの透明性です。ユーザーがオプトインすべき広告やその理由を理解する上でも、透明性が重要となります。つまり人々は、日常生活で共有する個人情報に責任を持つのと同じように、自分のオンラインデータプロフィールを構築、管理できる必要があるのです。

 そのためには、データが収集されることへの同意と、データの保存やリンク付けをしない暗号化されたIDのプライバシー性を基盤としてユーザーが全面的なコントロールを持ち、設定をいつでも変更、調整できる、オンライン広告用の新しい識別子を開発する必要があります。また、ユーザーのデータを安全に保存するためには、ブラウザーとつながりのない独立した組織が管理する一元管理システムの整備も重要となります。

顧客やパートナー主導であること

 どのようなソリューションでも、機能させ、持続させるには、媒体主、広告主、アドテク企業を含むインターネットのあらゆる関係者からインプットを受け、適応しなくてはなりません。

 広告主は自社のキャンペーンを効果的に測定する必要があり、媒体主はコンテンツを収益化する能力が求められ、アドテク企業は広告主と媒体主を後押しするためにデータへのアクセスが必要です。従って、エコシステム全体としての結論を出す際には、各プレイヤーが意見する権利を持ち、それぞれの意見が認識されることが不可欠です。

オープンであること

 真の変化は、オープンで誠実な環境からもたらされるべきであり、変化を起こすためにはエコシステム全体で参加する必要があります。サイロ化された環境から有益な変化が生まれることはなく、連携のとれた取り組みがあってこそ、各プレイヤーが納得できる提案につながります。識別子の課題への解決策は、一朝一夕には生まれません。そのため、業界が一丸となり迅速に対処すればするほど、より早く広告体験を向上させる取り組みに着手することができます。

柔軟性

 どのようなソリューションも、業界や市場の他の企業からのフィードバックによって生じ得る変化に対応できるよう、柔軟性を念頭に置いて構築する必要があります。識別子は共通の課題であり、基本理念に沿うことであらゆる企業に役立つ意見やソリューションを得られます。また、各企業が孤立して作業を進め、独自のソリューションを構築していた過去から脱却し、柔軟にお互いの意見を取り入れるオープンで協調的なアプローチを採用しなければなりません。

グローバルの流れにおける日本の現状

 欧州の一般データ保護規則(GDPR)や米カリフォルニア州の消費者プライバシー法(CCPA)/プライバシー権利法(CPRA)といった法規制同様に、日本でもデータプライバシーが重要視されており、2020年は個人情報保護法の改正が成立しました。規制の詳細や定義は各国異なるものの、根底に共通している目的はユーザーのプライバシーと権利を尊重し、データ使用において透明性や選択肢を提供することです。日本は世界と比べ、オンライン上のプライバシーに関する規制について後れを取っているという意見もありますが、今後、日本国内の規制もグローバルの標準に合わせていく必要性が生じることが予想されます。

 また、法規制のみではなく、大手のグローバル企業によるサードパーティーCookie廃止の動きも進められています。OSやブラウザーの変更に対して、W3Cでも新しい識別子に関する活発な議論が行われており、日々各プレイヤーからさまざまな提案が発表されています。このような早い流れにスピード感を持って対応していくためには、日本企業も業界団体のセミナーやパネルに参加し、積極的に意見や情報を交換することが重要になります。また、各国の規制やブラウザー、OSの変更に精通した他社とのパートナーシップや人材の確保での対応も考えられます。

 この業界全体の在り方を変えるさまざまな変更が生じる一方で、ユーザーのコントロール性と透明性の向上を推し進めることは、人々がパーソナライズされた広告から得られる価値を明確にし、交換価値のバランスを取る上で必要不可欠なステップであるということを留意しながら対応を進めていくことが求められるでしょう。より良いインターネットの構築を目指す上で、ユーザー、媒体主、広告主にとって4つ基本理念が共通のものとなり、一丸となって新しいオンライン識別子の実現に必要な変化をもたらすことが私たちの願いです。

池田智幸
Criteo Japan Head of Strategic Partnerships
オーバーチュアにてシニアマネージャーとして営業戦略、代理店戦略の立案をはじめ、モバイルセールスチーム、業種・業態に特化したコンサルティングおよび営業キャンペーンなどを指揮。その後、オットージャパンにてイーコマース事業のマネジメント、アドビシステムズのクロスメディア向けリッチコンテンツ配信サービス立ち上げを担当。Marin SoftwareとRubicon Projectで日本ビジネスの責任者を務め、Eyeotaでは事業開発ヘッドとして従事。Criteoに入社後サプライチームを統括した後、現職のHead of Strategic Partnershipsとして他社との戦略的なパートナーシップや識別子に関するプロジェクトをけん引。

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