電子契約市場、2024年まで平均4割弱拡大--行政の対応も追い風

藤代格 (編集部)

2020-11-25 06:45

 矢野経済研究所(中野区)は11月24日、電子契約サービス市場調査を発表した。2019年の事業者売上高ベースの市場規模は、前年比74.4%増の68億円。テレワークの広がりなどでサービス自体とその信頼性の認知が向上しつつ、2020年4月には労働条件通知書の電子化が解禁。引き続き必要性が拡大しているという。

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年は、在宅勤務が急速に拡大。書類の処理やハンコ押印のために出社する事態に直面し、事業継続計画(BCP)の観点からも電子契約サービスが注目される年となった。

 4月にはGMOインターネットグループが顧客手続時の印鑑廃止、取引先との契約の電子への統一を表明。業界に大きなインパクトを与え、2020年上期での電子契約サービス新規採用、適用範囲拡大など、企業内での活用増につながったとしている。

 5月には、取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認にクラウドを活用した電子署名が有効、と法務省が周知。6月には内閣府や法務省、経済産業省が契約書への押印不要の見解を示し、普及の追い風になったと説明。

 2020年の市場規模を前年比58.8%増、108億円に到達する見込みとしている。

 採用企業を規模別でみると大企業での導入が中心の一方、デジタル化への動きが鈍い中小企業での導入、検討も進んでいるという。コロナ禍で導入、検討をトップダウンで進める企業が増え、追い風になっていると説明している。

 導入の影響が法務部門に留まらないため社内向け文書からの活用開始などスモールスタートを主流としていたが、コロナ禍で移行が急務となり、変化しつつあると説明。全社導入から始める企業が増加し、スモールスタートの場合も全社導入を視野にいれた企業が多いという。

 導入まで1年以上かける傾向がある大企業でも3~6カ月程度で導入するケースが多く、中小企業では2~3カ月、もしくはそれ以下の期間での導入もあると説明。情報収集から実際に導入するまでの期間が短縮しているとしている。

 電子契約サービスの導入は部門、部署を跨いだ横断的なプロセスとなるため、社内規程や契約文言の見直し、契約相手の理解などが必要となる。2020年を情報収集や導入に向けた準備期間とし、2021年に本格導入を目指す企業も多いという。2021年の同市場はさらに伸長し、前年比62.0%増の175億円に到達すると予測。

 電子化していないホワイトスペースが多い、導入形態が部門から全社へと移りつつあるなどが市場の成長を後押しし、2017年から2024年までの年平均成長率(Compound Annual Growth Rate : CAGR)を37.8%、2024年に264億円に達すると予測している。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    初心者にも優しく解説!ゼロトラストネットワークアクセスのメリットと効果的な導入法

  2. ビジネスアプリケーション

    Google が推奨する生成 AI のスタートアップガイド、 AI を活用して市場投入への時間を短縮

  3. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

  4. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

  5. ビジネスアプリケーション

    ITR調査結果から導くDX浸透・定着化-“9割の国内企業がDX推進中も成果が出ているのはごく一部”

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]