矢野経済研究所(中野区)は11月24日、電子契約サービス市場調査を発表した。2019年の事業者売上高ベースの市場規模は、前年比74.4%増の68億円。テレワークの広がりなどでサービス自体とその信頼性の認知が向上しつつ、2020年4月には労働条件通知書の電子化が解禁。引き続き必要性が拡大しているという。
新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年は、在宅勤務が急速に拡大。書類の処理やハンコ押印のために出社する事態に直面し、事業継続計画(BCP)の観点からも電子契約サービスが注目される年となった。
4月にはGMOインターネットグループが顧客手続時の印鑑廃止、取引先との契約の電子への統一を表明。業界に大きなインパクトを与え、2020年上期での電子契約サービス新規採用、適用範囲拡大など、企業内での活用増につながったとしている。
5月には、取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認にクラウドを活用した電子署名が有効、と法務省が周知。6月には内閣府や法務省、経済産業省が契約書への押印不要の見解を示し、普及の追い風になったと説明。
2020年の市場規模を前年比58.8%増、108億円に到達する見込みとしている。
採用企業を規模別でみると大企業での導入が中心の一方、デジタル化への動きが鈍い中小企業での導入、検討も進んでいるという。コロナ禍で導入、検討をトップダウンで進める企業が増え、追い風になっていると説明している。
導入の影響が法務部門に留まらないため社内向け文書からの活用開始などスモールスタートを主流としていたが、コロナ禍で移行が急務となり、変化しつつあると説明。全社導入から始める企業が増加し、スモールスタートの場合も全社導入を視野にいれた企業が多いという。
導入まで1年以上かける傾向がある大企業でも3~6カ月程度で導入するケースが多く、中小企業では2~3カ月、もしくはそれ以下の期間での導入もあると説明。情報収集から実際に導入するまでの期間が短縮しているとしている。
電子契約サービスの導入は部門、部署を跨いだ横断的なプロセスとなるため、社内規程や契約文言の見直し、契約相手の理解などが必要となる。2020年を情報収集や導入に向けた準備期間とし、2021年に本格導入を目指す企業も多いという。2021年の同市場はさらに伸長し、前年比62.0%増の175億円に到達すると予測。
電子化していないホワイトスペースが多い、導入形態が部門から全社へと移りつつあるなどが市場の成長を後押しし、2017年から2024年までの年平均成長率(Compound Annual Growth Rate : CAGR)を37.8%、2024年に264億円に達すると予測している。
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