第1回、第2回では中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマにしましたが、第3回と第4回は、地域の事業者が抱える課題とIT活用を取り上げます。
筆者が担当する広域営業本部は、東京、大阪以外の日本全国の地域の事業者を対象にSalesforceのソリューションを届けることをミッションにしています。筆者が所属する部署は日本のほぼ真ん中に位置する名古屋を拠点としており、北は北海道、南は沖縄まで全国各地の顧客や導入を検討している方に、サポートや提案を行っています。
セールスフォース・ドットコム(セールスフォース)としては4~5年前から地域の事業者のDX支援に取り組み始めていますが、筆者が着任したのは2020年2月です。地域の事業者の支援を強化し始めたこのタイミングは、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、働き方が変わり始めた時期でもありました。
これまでのセールスフォースの地域での営業活動を通して感じたことに加えて、コロナ禍での変化も踏まえて、地域の事業者が今後成長していくために必要な考え方を解説します。
地域の事業者が直面する課題
広域営業本部として数多くの地域の事業者を訪問し、経営者の方々から状況をうかがう中で感じることの一つは、東京などの都市部との情報量の違いです。オンラインや書籍などを通じて最新情報を収集している場合もありますが、日々の業務に追われる中で自発的に必要十分な情報収集まで至っていないケースも見られます。
コロナ前であれば、首都圏で頻繁に開催されるイベントやセミナーなどの機会に最新情報に触れることができました。参加者や経営者同士の交流会などを通して、他社がどのようにDXを推進しているか、働き方や組織を変革しているか、といった話をダイレクトに聞いて、刺激を受けることも多くあります。周囲の変革を感じるので、自社も出遅れてはならないとDXへのモチベーションが高まるのです。
筆者などが訪問する顧客でも、首都圏の場合は課題に対するDXの具体的な提案から始まります。しかし、地域の場合はそもそものところ、DXの必要性から説明する場合も少なくありません。コロナ禍でオンライン化が加速し、イベントやセミナーへのアクセスは容易になりましたが、参加者との交流には限界があります。交流会などからDXの必要性を感じ取ることがより一層難しくなっていると感じます。
また、コロナ禍で不確実性が高まっている今、事業の成長は地域の事業者にとってこれまで以上に意識を払うべき、喫緊の課題となっています。
こうした状況は、もちろん地域の事業者の置かれた環境が引き起こしているだけではなく、むしろ筆者などベンダー側に責任があると感じています。課題を解決したいと思っても、何から手を付けていいかわらかないという経営者に対して、タイムリーな情報提供などの地域でのサポート、提案を今後さらに強化していきたいと考えています。