中小企業のCRM活用の実情--既存顧客だけで売り上げを伸ばせますか?

千葉弘崇 (セールスフォース・ドットコム)

2020-11-27 07:15

 顧客との関係を強化し、顧客から選ばれる企業になるためには、どのようにすればいいでしょうか。デジタルトランスフォーメーションやデジタル変革という意味を持つDXの基本、取り巻く課題の整理、進め方などを紹介した前回に続き、今回は中小企業が顧客との関係性を強化するための具体的なデジタル化方法、業務改革を実現した事例について取り上げます。

企業が顧客とつながる重要性

 顧客とつながる、というと多くの方がすでに既存客とはつながっているし、長期間にわたる強固な関係ができていると考えていらっしゃるのではないでしょうか。また、見込客に対しても、営業担当が定期的に訪問、フォローできていると捉えているかもしれません。

 しかし、そのつながり方は“昔ながら”のやり方になっていないでしょうか? 経営者同士の仲が良い、こまめに訪問している、顧客にあわせた製品やサービスを提供している、接待している――。こういったつながり方は、特にコロナ禍以後、通用しにくくなっていると言わざるを得ません。

 また、特に意識しなければならないことは、すでに顧客企業が“昔ながら”から脱却して進化しているということです。ビジネスは顧客が感じた価値に応じて対価を支払う、という形式で成り立ちます。提供できる価値が顧客の期待に応え、顧客を満足させるものでなければ、長年の取引実績があっても顧客は離れていきます。

 顧客が進化している理由の一つが、以前と比べて収集できる情報が爆発的に増えていることです。商品を選定する前に、自ら調査して情報を収集し、競合製品と比較します。レビューやSNSなどウェブ経由でユーザーの声を確認することもありますし、場合によっては実際に使っている人にヒアリングする場合もあります。しかし、顧客は別の新しい取引先を検討していることを明かしてくれません。顧客が何を考えていて、ニーズは何か――。聞かなくても先んじて理解して価値を提供できるようにしておかないと、どんどん顧客離れを起こしてしまうことになるでしょう。

中小企業のCRM活用の実態

 顧客との関係を強化するために有効なツールが顧客関係管理システム(CRM)です。顧客に関するデータを蓄積し、一元管理することで、顧客の情報を漏らすことなく社内で共有します。これにより顧客との関係を強固にし、ニーズ把握、満足度向上につながり、結果として顧客の満足を獲得でき、売上拡大につなげられます。

 さらに顧客データを関係者がすぐに確認できるようになるので、作業時間の短縮、会議時間の削減、データ集計の短縮など生産性向上も期待できます。生産性が上がれば、余剰時間が生まれ、顧客対応のホスピタリティを向上させ、顧客満足度の向上へ特に効果があります。

 CRMについては、専用のツールを使わずとも実現できる場合がありますが、一般的にデータ量が増えるほど難易度はあがります。中小企業における顧客管理の状況を以下のようにレベル別に分けてみました。

  • レベル1:顧客情報をデータとして持っていない
  • レベル2:データとして持っているが、バラバラに管理している
  • レベル3:データを蓄積し、一元管理できているが、活用できていない

 中小企業で最も多いのがレベル2で止まっている状態です。この場合、営業担当者ごとにExcelなどで管理していることが多く、データに重複がある、部署によってフォーマットが異なり結合できない、個人PCに保存しており他の人がアクセスできないなどの課題があります。

 レベル3は、一元管理できているが、情報量にばらつきがある、名寄せができていない、競合企業の情報まで入っているなどで、データを活用したアクションができない状態です。このような課題を打開するために専用のCRMを導入する企業が多いのが最近の実情です。

 レベル3が抱える課題を解決できれば、データを活用して顧客へのインサイト(気付き)を得て、ニーズの把握、先回りした提案ができるようになります。

 さらにCRMの機能をフルに活用することで、見込客の管理に加えて、営業のプロセスの可視化、潜在顧客の掘り起こし、業務の標準化なども可能になります。より顧客にあわせたコミュニケーションができ、売り上げの向上にもつながります。

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