女性用アパレルや雑貨のEC(電子商取引)事業などを展開するスクロールは、複合通信販売の受注管理を支える基幹システムを「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」へ移行し、9月に稼働を開始した。日本オラクルが発表した。
この基幹システムは1日約15万の受発注トランザクションを処理するもので、今回の移行により、オンプレミスやプライベートクラウドではボトルネックになりがちだったIOPS(1秒当たり処理できるインプット/アウトプット数)の性能課題が解消され、システムの基礎性能や処理スピードが向上した。
また、システムを止めることなくデータベース性能をチューニングできるため、ビジネス拡大やサービス増加によるシステム拡張にも動的に対応することが可能となった。さらに、受発注の季節変動によるトランザクションの増減にもリソースを増減することで対応でき、IT運用管理の軽減やコストの最適化にもつながっている。
日本やアジアを中心とした海外拠点を含む20のグルーブ事業会社を有するスクロールは、適材適所でのテクノロジー活用を前提に5つのベンダーを選定し、マルチクラウド戦略を推進している。ウェブ/情報系のシステムは既にパブリッククラウドを活用していたが、「JD Edwards EnterpriseOne」「Oracle Database」などで構成された基幹系を中心とするミッションクリティカルな業務システムに関しては、安全性の面でプライベートクラウドを構築して運用していた。
だが、市場の急速な変化に伴い顧客データも急増しており、データ収集、転送、分析、トランザクションを担う基幹システムにおいては、5年後のシステムに必要な性能を見極めてハードウェアを準備していくことは難しい状況と判断し、今回の移行実施に至った。
新しいシステム基盤では、マルチクラウドの枠組みの中で、基幹システムのデータを着実に守りながら、他のパブリッククラウドで構成されたサブシステムとデータの連携がしやすいことも要件として挙げられていた。
同社はOCIについて、ネットワークの設計、IOPSの性能、費用対効果の高さなどのサービス品質に加え、クラウド移行の最大の懸念となっていたセキュリティへの不安を払拭する「セキュリティファースト」の設計を特に評価したという。
同社は、2020年以内に社内のほぼ全てのシステムのクラウド移行が完了することを予定している。現在、DRサイト(緊急の代替拠点として使用する施設や設備)としてOCI大阪リージョンにおける構築が進んでいるほか、ビジネスインテリジェンスの基盤として「Oracle Autonomous Data Warehouse」活用するなど、OCIで提供されるテクノロジーやサービスを活用していく。