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DX実現を加速する数理最適化コンサルティングの可能性

小西宏明、畠山敦志 (クニエ)

2021-01-28 07:00

サマリー

  • 数理最適化とは、問題を目的関数と制約条件の形に整理し、数理的な手法を用いて、制約条件を満たしつつ目的関数の最大化(ないし最小化)を行う営みである。まだ、マイナーな手法であるが、問題によっては機械学習や人工知能(AI)を用いるまでもなく、鮮やかに解決できる可能性を秘めている。本稿ではグループ分け問題の解決により業務負担を大きく軽減した事例に触れる
  • 数理最適化の活用に当たっては、手法ありきで進めるのではなく、さまざまな手法の中から有効性を判断して、問題解決の枠組みを選択すべきである。同時に、現場に真に役立つ問題解決のために、現場に根差した問題を定義し、実務の制約条件を織り込んでモデル化することが重要である
  • 開発した手法が現場の実業務で活用され、真に成果を生むには、手法の効果を早期に現場の担当者に実践的な局面で実感してもらいつつ、高速なサイクルでモデルを改善していくことが重要だ。こうした問題解決アプローチの勘所は、将来、量子コンピューターなどの新しい手法を数理最適化に活用するとしても変わらない

はじめに

 近年、ビジネスの変革を目的として、データ分析や機械学習といった、データを活用した新しいテクノロジーを応用する試みが進んでいる。しかし、この種の試みはPoC(概念実証)に終始し、ビジネス・業務の変革に至っていないケースも多々あるのではないだろうか。聞き慣れない、あるいは活用実績が少ない技術は、特にその傾向にあると考えられる。実務上のメリットが実感できないと、技術を利用する意義が理解されないのだ。

 本稿で取り上げるテクノロジーの数理最適化もその1つであり、機械学習やAIと比較すれば、一般的な認知度が決して高いとは言えない。

 数理最適化そのものは、古くからある技術であるが、機械学習のパラメーターの最適化、量子コンピューターの最適化などの面から近年注目されている。筆者は、数理最適化のポテンシャルは非常に大きいと考えている。

 しかしながら、数理最適化の技術そのものを問題解決に応用する試みは、いまだ例が少ない。特に、ビジネス・業務での活用実績が身近にあまり見られないことから、イメージが湧きにくい。そのため、手法を活用する際には、実践的な局面で実務担当者がメリットを実感することが重要であり、効果のイメージが早期に得られれば、業務の変革が進みやすいのではと考えた。

 そこで筆者が所属するクニエで、数理最適化の手法を活用したコンサルティングにトライすることとし、社内のバックオフィス部門の業務変革を行った。

 本稿では、その事例をもとに課題の発掘からユーザー部門への定着まで、データ活用の一手法である数理最適化に基づいて実施した一連の問題発見・解決プロセスを説明し、今後のビジネス領域への応用可能性を示す。

1:ビジネスにおけるデータ活用の現状--問題解決に資する活用ができているか

 皆さんはビジネスにおけるデータ活用と聞いて、どのようなイメージを想起されるだろうか? 棒グラフや円グラフといった可視化されたアウトプットをイメージされる方、あるいはPythonやRといったプログラミング言語による処理、Excelのワークシートでの処理などを思い起こされる方などさまざまであろう。

 ここ数年でデータ分析、データ活用の市場は急速に広まり、おびただしい数の書籍が出版され、データ分析を取り上げたメディアも増加している。また、AIをはじめとするデータ分析にまつわる用語が、日常業務においても、会議やメール、チャットなどで飛び交うようになってきた。ビジネスにおけるデータ活用は、徐々にではあるが、世の中に広く浸透しつつあり、ビジネスマンの必須スキルとして認知され始めていると言える。

 実際に、企業をはじめとするさまざまな組織において、蓄積されたデータをどのように分析し、活用していくのか、真剣な検討が進んでいる。一時期に比べて、データを手当たり次第に分析するフェーズから、地に足の着いた分析結果に基づき、ビジネスの意思決定に生かすフェーズへと深まりが見られる。

 筆者は、多くの企業のデータ分析・データ活用における問題点は、以下の3点に集約されると考えている。

  1. 現場の実業務に役立つ解決手法の選択、制約条件を織り込んだモデル化ができていない
  2. 仮説設定 → 分析 → アクション → 検証のPDCAサイクルが十分に回せていない
  3. 実業務に当たる現場の人間が、導入した手法・解決策の効果を十分に実感できていない

 特に、単に流行の手法であるからという理由で、何でも問題解決手法に機械学習やAIを導入しようとして失敗するケース(1)があるのではないか。手法ありきの問題解決はビジネスに役立つ結果を生まない。

 このような問題を改善するために必要なのはビジネス視点、データ分析視点を相互に行き来しながら現場のニーズを的確に把握することである。

 われわれは、今回社内で取り組んだ事例において、コンサルタントの視点から、データを用いてより効果的かつ持続的に、そのパワーを実際に業務に携わる担当者に感じてもらうことに注力し、今回の「数理最適化コンサルティング」を実践した。必ずしも機械学習やAIといった「流行りの技術」を使うことが正しいわけではない。マイナーな最適化技術が大いに問題解決に役立つケースもあることを示したい。

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