オフィスの将来--消えた「生産性の必須条件」という考え

Owen Hughes (TechRepublic) 翻訳校正: 編集部

2021-03-24 07:45

 向こう数カ月間で企業が直面する大きな問題の1つは、オフィスの将来の役割だろう。

 多くの企業経営者にとって、この1年は、社員がデスクに縛られることなく生産的に仕事をする能力を完璧に備えていることを示す事例研究となった。確かにこのようなリモートワークの急速な導入には問題がないわけではないが、従来の9時から5時までの日常業務やオフィススペースが今でも適切なのかどうかが問われている。

 一言で言えば「適切」だが、恐らく2020年以前とは意味合いが異なるだろう。専門職や知識労働者にとって、1日の大半はノートPCとインターネット接続以外には何も必要ないかもしれないが、過去12カ月間で、同僚と直接顔を合わせる時間がいかに重要かということも明らかになった。

 「オフィスの価値とは何か?それはあなたの同僚であり、共同作業をする能力だ」と、不動産テック企業Coveの最高経営責任者(CEO)であるAdam Segal氏は言う。

 テクノロジー企業は、職場の見直しを巡って主導権を握ってきた。

 クラウド顧客関係管理(CRM)企業のSalesforceはこのほど、どこからでも勤務可能にするという恒久的な方針を発表したほか、よりハイブリッドな働き方に合うよう、不動産への投資をどのように活用しているかについても大幅に見直した。

 具体的には、Salesforceは、オフィスをチームワークと共同作業のための拠点に変えることを計画している。つまり、デスクをなくし、ブレイクアウトスペースや会議室を設けるのである。

 Salesforceはこのような明確な発表をした最初の企業の1つだが、これが最後の企業でないことは確かだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種が本格化するにつれ、企業は不動産への投資からいかにして継続的に価値を得られるかを考えるようになるだろうとSegal氏は言う。

 同氏は「オフィスが生産性の必須条件であるという考えは、この11カ月間で完全に消滅した」と米TechRepublicに語る。「専用のデスクはもはや必要ないと考えるのが良いだろう。それこそ、状況をうまくまとめた表現だ」(同氏)

 コロナ前の時代には、オフィスは社員が腰を落ち着けて仕事に集中するための場所として設計されていた。在宅勤務は特別な場合に限られるという意見もあった。

 ワークプレイステック企業Crestonで技術担当取締役バイスプレジデントを務めるRanjan Singh氏は、社員が職場に戻ってくるようになったら、オフィスは、より「短期滞在型」なワークフォースを収容する場所となる必要があると考えている。オフィスを訪れることがまれになれば、自分専用と呼べるデスクがなくなることも考えられる。

 Singh氏は米TechRepublicに対し、次のように語っている。「オフィスは、出勤してデスクで仕事をし、場合によっては役員室で何回か会議に出席して帰るという場所だったのに対し、今後はチームのつながりや協力が重視される共同作業向けスペースへと移行していくだろう」

 従来の8時間のオフィス勤務を廃止するならば、ハイブリッド型の職場は新たな労働形態にも適合しなければならない。

 柔軟性のあるスケジュールや時間貯蓄、分散勤務といった概念により、社員にとっては1日をどのように構成するかの選択肢が増える可能性があり、オフィスの使い方も、このかつてない流動性を反映する必要が出てくるだろう。

 Singh氏は、「新しいオフィスは社員がより頻繁に出入りし、オフィス内を移動してさまざまなチームとつながる場所になると想像している」と語る。

 「チームはオフィスに集まって会議をしたり、時間を決めて対面で共同作業をしたりする。その後、家に帰って1日を終えることができる」(Singh氏)

 最も効果的な職場とは、ざっくばらんな井戸端会議や場当たり的なミーティングができ、必要なリソースが容易に得られる場所でなくてはならない。つまり、物理的なアーキテクチャーと技術的なアーキテクチャーの両方が互いに補完し合い、「相乗的に機能する」ことが必要だとSingh氏は言う。

 例えば、会議室を予約したり、使用中かどうかを簡単に確認したりができる部屋の予約システムがその一例だ。「組織がますます依存しつつある『Zoom』や『Microsoft Teams』といったソフトウェアへのシームレスな接続性が搭載されているだけでなく、意思決定者のために部屋のスペースや使用状況に関する重要なデータ分析を提供する職場の自動化技術は、長期的な成功の鍵となる」(Singh氏)

 Segal氏によれば、物理的な空間を再考するだけでなく、ハイブリッド型の職場では、出社率よりも生産性を中心とした管理へと向かうようになるという。

 管理職は社員を直接見ることができなくなったため、社員が最高の状態で働き続けるための新たな直感的な方法を見つけることが、長期的なリモートワークを成功させるための鍵となる。

 しかしSegal氏は、優れた管理とは必ずしも社員と働きぶりを物理的に監視し続けなければならないということではないと指摘する。

 「一般的に、誰かを管理することは何を意味するのだろうか?その人の隣に座る必要がないことだけは確かだ」(Segal氏)

私たちが戻ってくる頃にはオフィスは様変わりしているかもしれない。もし仮に戻るのであればの話だが。</br>
提供:lichaoshu
私たちが戻ってくる頃にはオフィスは様変わりしているかもしれない。もし仮に戻るのであればの話だが。
提供:lichaoshu

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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