新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による緊急事態宣言が解除されて1カ月以上が過ぎ、企業も自宅勤務させていた従業員をオフィスに戻しつつある。だが、その場合、企業にとって、いかにオフィスでの感染を予防し、従業員の安全を確保するかが大きな課題となる。
このような課題をクリアするために様々なレベルで対応を考える必要がある。そのうち、従業員が1日の多くの時間を過ごすオフィスの環境は、どのような変化が求められるのか。ポストコロナ時代の新しいオフィスデザインについて提案している総合デザイン会社ROOM810(ルームハート。東京都荒川区)でインテリアデザインを手掛ける齋藤悠氏に話を聞いた。
--ウィズコロナ時代のオフィス環境として求められる条件とは何なのでしょう。
まず、レイアウトの部分で考えているのは、これまでの日本にありがちな島型のデスクレイアウトについて“脱・島型”ということで、なるべくデスクを付け合わせないようにすることです。
齋藤悠氏
提供:ROOM810
あと、換気や空気環境は、オフィスで意外と重要視されていない部分なのですが、弊社でいうと、CO2計測の機械を入れたり、換気量が普通のオフィスよりも多く、早く回るような換気システムを入れたりする、といった仕組みにしています。
また、デスクがこれまで固定だったのを、よりフレキシブルな使い方ができるよう、フリーデスクにしたり、フリーアドレス化したりして、会議室やちょっと広いスペースが空いていれば、そこで仕事ができるような環境にすべきなのではないかなと思っています。
背中合わせに座るメリット
--基本にあるのは、いわゆる“3密”の防止ということでしょうか。
そうですね。“3密”も防止しつつ、やはり、島型というのは、日本だと部署とかチームごとになっていて、それだとチーム内の関係性はあるのですが、他のチームとの連携性も考えると、いろいろ(座席が)散らばって、フレキシブルになっていた方がいいのではないかと思います。
--“脱・島型”というのは具体的にどのような形になるのでしょう?
たとえば、壁面にデスクをレイアウトしたり、四隅をうまく使ったりというのがあります。あと、“まんじ”型にすることで、なんとなくグループ化はされているのですが全員が向いている方向が違うので、飛沫感染を抑えられるのかなと思っています。
あと、背中合わせに座って仕事をしていれば、クルッと向きを変えればすぐ声をかけられるという環境になるので、あえて背を向かい合わせるようにデスクをレイアウトする形も面白いかなと思っています。
“脱・島型”レイアウトの例
提供:ROOM810
--フリーアドレス導入の意図というのは、やはり、特定のエリアに密集するのを避けるためでしょうか。
はい、そうですね。あと、各スタッフのスケジュールによってテレワークの調整が効かなかったりすることがあります。たとえば、今日は営業が6人出社しているけど、技術は全員テレワークになったという時です。このような場合でも、フリーアドレスだと、出社している人の座る場所を分散できると思います。
--安全性の確保とともに作業効率の維持も必要と思われるのですが、どうバランスを考えれば良いのでしょう? 先ほど、背中合わせに座るという話もありましたが。
背中合わせに座ることで、コミュニケーションが取りやすい2メートルという位置とソーシャルディスタンスの2メートルというのを確保しつつ、人のいる雰囲気を多少感じられるとも思います。