本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ヴイエムウェア 代表取締役社長の山中直氏と、シスコシステムズ 代表執行役員社長の中川いち朗氏の発言を紹介する。
「われわれは『Digital Foundation』によってDXの取り組みに自由度を提供したい」
(ヴイエムウェア 代表取締役社長の山中直氏)
ヴイエムウェア 代表取締役社長の山中直氏
米VMwareの日本法人ヴイエムウェアは先頃、国内での事業戦略についてオンラインで記者説明会を開いた。山中氏の冒頭の発言はその会見で、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みに対して同社がどのように貢献できるかを示したものである。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言にある「Digital Foundation」という言葉に注目したい。
Digital FoundationはVMwareがかねて掲げてきた「Any Cloud、Any Application、Any Device」を実現し、ニューノーマルな時代のDXを支えるものだという。同社はこの言葉を、自らが提供するテクノロジーやプロダクト、サービスからなる総合ビジョンと位置付けている。
山中氏はDigital Foundationについて図1を示しながら、次のように説明した。
図1:VMwareがもたらすDigital Foundationの概要(出典:ヴイエムウェア)
「当社の重要なミッションは、テクノロジーの進化と共にさまざまな抽象化レイヤーを実装することだ。このアプローチは、サーバーの仮想化を皮切りに、全てのハードウェア、クラウド、そしてアプリケーションのレイヤーに広がり、お客さまが最適な形で利用できるようにさまざまな選択肢を提供し、DXの推進を支援している」
さらに、それらの抽象化レイヤーに適用するセキュリティ機能を合わせて統合管理を可能にしているのが、VMwareがもたらすDigital Foundationだ。図1の上下に記されているのが、Digital Foundationを実現する主要なソリューションである。
山中氏がDigital Foundationについて説明した中で、少々毛色の違った内容があったので紹介しておこう。図2がそれだ。同氏によると、上段が「経営者が求めるデジタル化」、下段が「ITが直面する課題/挑戦」で、その両方の要求に対応できるのがDigital Foundationであることを表したものだ。同氏はこの図について時間をかけて丁寧に説明していた。これまで同社の会見はテクニカル色が強かったが、その印象を変えたいという「山中色」が滲み出ていたように感じた。
図2:経営とITの両面の課題に対応するDigital Foundation(出典:ヴイエムウェア)
そんな山中氏に、「Digital Foundationを掲げるVMwareはデジタルエコシステムの要に存在しているとお考えか」と聞いてみた。すると同氏は、「そうありたいし、そこを目指している。ただ、デジタルエコシステムの要というと、ロックインされているという印象を持たれるケースがあるが、われわれは抽象化するテクノロジーによってDXにおける選択肢を広げ、自由度を提供している。その意味で、まさしくデジタルエコシステムを支える基盤だと考えている」と答えた。
この考え方が、Digital Foundationの神髄なのだろう。今年1月に現職に就いた同氏の経営手腕に注目していきたい。