本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、AWSジャパン 常務執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏と、Dataiku 共同創業者 CEOのFlorian Douetteau氏の「明言」を紹介する。
「ガバメントクラウドの活用はやるべきことを確実にやっていくのが大事だ」
(AWSジャパン 常務執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏)
AWSジャパン 常務執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏
米Amazon Web Services(AWS)の日本法人であるアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は先頃、ガバメントクラウド推進に向けた同社の取り組みについて記者説明会を開いた。宇佐見氏の冒頭の発言はその会見で、ガバメントクラウド活用のプロジェクトが計画に対して遅れているとされる中でその対処策について聞いた筆者の質問に答えたものである。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは宇佐見氏の冒頭の発言に注目し、計画に対して遅れているとされるガバメントクラウド活用のプロジェクトをどうすれば加速することができるかについて探ってみたい。
「AWSは国民一人一人がデジタルの恩恵を享受できる社会を目指し、テクノロジーおよびデータの民主化を進め、公共機関(ガバメント)の支援を一層強化していく」
宇佐見氏はガバメントクラウド推進に向けたAWSの取り組みについてこう述べ、具体的には図1に示すように「クラウドスキルの育成」「ガバメントクラウドへの移行支援」「スマートなクラウド利用に向けて」といった3つの観点から支援を行っていることを説明した。
(図1)ガバメントクラウド推進に向けたAWSの取り組み(出典:AWSジャパンの会見資料)
そして、現在の状況については、「ガバメントクラウド先行事業および早期移行団体検証事業を通じて、300を超える自治体でAWSを利用していただくことになっている。2025年度の本番移行に向け、AWSは自治体および事業者を全面的に支援していく」と述べた(図2)。
(図2)AWSのガバメントクラウド推進状況(出典:AWSジャパンの会見資料)
ガバメントクラウドの活用については、国は2025年度までに運用経費を2020年度比で3割減らす目標だが、それまでに移行できる国のシステムは全体の2割程度にとどまるとみられている。また、自治体の基幹システムは2025年度までにガバメントクラウド上に構築する共通基盤システムに移行する計画だが、少なくとも人口の半分を占める自治体で期限に間に合わない模様だ。
こうした状況において少しでもプロジェクトを加速させていくためには、どのような対処策があるか。「グローバルで知見を蓄積しているAWSとして何かアドバイスがあればお聞かせいただきたい」と会見の質疑応答で聞いたところ、宇佐見氏は次のように答えた。
「プロジェクトのスケジュールにおいて厳しい状況はあるものの、まずはやるべきことを確実にやっていくのが大事だ。AWSとしては、ガバメントクラウドを有効活用してさまざまな作業プロセスを自動化し、時間を短縮できるように取り組んでいきたい」
冒頭の発言は、このコメントから抜粋した。今のところ、ガバメントクラウド活用のプロジェクトでは、クラウド基盤サービス市場でシェアトップのAWSの影響力が非常に大きいとみられるだけに、AWSにはさらに海外の成功事例なども生かしてもらいたいところである。