セールスフォース・ドットコム(以下、SFDC)が2021年3月に発表した「Eコマース最新事情(第1版)」は、企業の販売担当者を対象にSalesforce Researchが実施した調査結果である。企業の83%が以前からオンライン販売を実施し、デジタルへの投資を継続しており、その投資先としてECがトップに立ったことが分かった。このような購買動向を掘り下げるため、同社専務執行役員 ジェネラルマネージャ デジタルマーケティング・ビジネスユニット 笹俊文氏に話を聞いた。
笹俊文氏
提供:セールスフォース・ドットコム
消費者行動の変化について全般的な動向として、新型コロナウイルス感染症の拡大によりECでの購買は2020年に増加したが、笹氏は、「2020年から2021にかけて、欧米などでコロナが終息に入っている国もあることから、ギャップ(一時的な落ち込み)が生じている。だが、その後は右肩上がりで再び成長する」と述べる。
「ECが増える理由は2つに大別され、1つは外出機会の低下、もう1つは利便性。右肩上がりで再び成長するのは、この利便性のため。ECは、人々が街に出られるようになると下がるが、体験重視型というのが今の動向なので、結局、利便性が再び求められるようになり増加する」
さらに、「OMO(オンラインとオフラインの融合)といわれるように、店舗に並びたくない消費者は店舗に訪れて商品をピックアップするという変化も見られる。また、最新技術を用いた新しい購買体験を提供することで、購入の導線につなげる動きは体験重視型から生まれた変化の1つ。コロナ禍で店舗を閉じなければならない企業側には、店舗スタッフをコンシェルジュに仕立てるなどリソースの再配置が必要」と笹氏は述べ、2020年と同様の購買量に回復するには2023年ごろまで待たなければならないと解説した。
提供:セールスフォース・ドットコム
このような動向を受けて、気になるのは、実店舗の位置付けだ。「ロックダウンを実施した海外は、既存店舗が商品をピックアップする拠点に変化している。国内はロックダウンしていないものの、混雑を避ける、もしくは早く商品を手に入れたいという意味でピックアップ拠点化する傾向は強まる」と述べる。
他方で「ショールーム型店舗」も増加するという。「実際に商品を触ってみないと購入に踏み切れない商材も少なくない。アパレル商品が好例だ。たとえば店舗内にビーコン、商品にRFIDを付与するケースも出てきていたりする。まだ実験段階だが、顧客にスマートフォンのアプリケーションを事前にダウンロードしておいてもらうことで、遠隔にいる店員は会員情報や顧客情報を確認しながらカメラ越しでコミュニケーションするといったことは、ソリューション提供者という立場から見ればすでに始まっている」と自社の知見を述べた。