ECサイトで1兆8770億円の機会損失--顧客対応としてのメッセージングの可能性

田中好伸 (編集部) 阿久津良和

2021-02-17 06:30

 「メールよりメッセージング」――。若者だけではなく、中年・壮年も簡素かつ的確に意図が伝わるメッセージングをビジネスで活用する場面が増加中だ。

 基本的にメッセージングサービスは運営企業のプラットフォームに依存するものの、ビジネス運用時に自社ブランドで利用する際は、LivePersonの「LiveEngage」が顧客エンゲージメントの向上に大きく寄与できるという。日本法人であるライブパーソンジャパン セールスディレクター 杉山淳氏にビジネスとメッセージングサービスの話を聞いた。

実店舗は重要、でも対面は嫌う日本人

 ライブパーソンジャパンでは、メッセージングを「非同期型コミュニケーション」に分類している。自身のタイミングで連絡、返信できるメッセージングは情報や意思伝達を継続し、同期型コミュニケーションに分類される電話やチャットと異なり、同時期に複数の相手と交流することも可能だ。

 「同期型コミュニケーションは(電話やチャットが)切れたら終わり。たとえば対応してもらったコールセンターのオペレーターと再びつながることは基本的にない」(杉山氏)

 ウェブサイトやモバイルアプリケーションにメッセージング機能を拡張するLiveEngageを提供するライブパーソンジャパンが、2021年1月に発表した「LivePerson 顧客対話レポート(LivePerson Consumer Conversation Report)」によれば、コロナ禍におけるメッセージングの急増と人工知能(AI)活用の促進がうかがえる。

 日本、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの消費者3014人を対象に2020年9月に調査。国内のメッセージング活用率は2019年6月~2020年6月に月平均15%の割合で増加し、緊急事態下の2020年3月29日~5月10日は83%の増加が確認できた。

 以降の2020年9月までは11%増。アプリケーションはやはり「LINE」が強く、2020年5月比で161%、2020年の年初と比較すると2.7倍に増加している。国内メッセージングシステムのうち81%がAIを利用しており、グローバル平均の67%、環太平洋地域の71%を大きく上回った。

 本稿執筆時点では1都3県に2回目の緊急事態宣言が発令され、実店舗での買い物は厳しい状況にある。それでも日本の81%は実店舗が重要性であると回答。その一方で、対面顧客サービスを望む割合は10%と著しく低い(オーストラリア30%、ニュージーランド29%、シンガポール27%)。

 外出自粛下でECサイトを使う方も増えているようだが、非接触型の買い物を重視する割合は69%、実店舗での買い物に懸念を覚える割合は60%、コロナ禍によってECサイトの利用に抵抗感を覚えなくなった割合は33%におよんだ。

 調査で注目したいのが、ECサイトの機会損失額である。誰しもが気になる商品をカートに入れたまま放置し、次にアクセスした際は興味がなくなって削除した経験をお持ちだろう。調査結果によれば過去12カ月間でオンラインショッピングを中断したことがある割合は59%におよぶ。

 また、商品をカートに入れたまま決済しない状態を俗に「カート落ち」「カゴ落ち」と呼ぶが、その総額は年間1兆8770億円に達することが分かった。経済産業省が2020年7月22日に発表した「電子商取引に関する市場調査」によれば、国内の個人消費者を対象にしたEC市場規模は約19.4兆円であることを踏まえると、約1割の売り上げを捨てていることになる。

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