前回の記事において、ミッドレンジコンピューター「IBM i」を、「当時なぜ導入したのか?」「なぜ今も使っているのか?」の理由を整理した。「古いまま、ずっと使っているのだな」と印象をお持ちになったかもしれないが、IBM iはその前身となる「AS/400」とは違うものである。
今回は、IBM iの実体とレガシーの正体をさらにわかりやすくかつ詳しく解説する。
古いコンピューターを持っていて大丈夫なの?
古いコンピューターを表すものとして「レガシーシステム」という言葉を良く目にすることが多くなってきている。なんとなく、IBM iはこれに相当するとされているが、このまま使い続けていいのかの判断においては、曖昧にできない大事なことである。
まずはレガシーの基準を考え、IBM iが相当する点を整理してみよう。
保持するコンピューターがレガシーであるかどうかの基準は、下記の4点となる。
- そのコンピューターメーカー以外のコンピューターと接続できない
- そのコンピューターでしかプログラムやデータベースを使えない
- そのコンピューターでしか使えない技術でしか動かせない
- 昔の技術で作られていて、新しい技術は使えない
まず、基準にIBM iが当てはまるかを確かめる前に、明確にしておかなければならないことがある。それは、IBM iはその前身となるAS/400とは決定的に違うということである。AS/400はハードウェアや基本ソフトウェアを統合したシステムであることに対し、IBM iは基本ソフトウェアのみを指す。ハードウェアは「Power Systems」と呼ばれていて、IBM iはそのコンピューター上で稼働する基本ソフトウェアという位置づけとなる。
では、この前提を踏まえて基準と比較してみよう。
1.そのコンピューターメーカー以外のコンピューターと接続できない
30年以上前から専用端末をPCで代替することは一般的に行われているため、それを除いた判断となる。IBM iは、インターネットで標準とされている通信手順で接続することができるため、その標準に沿った機器と接続可能であり、他のコンピューターとこの点は変わらない。IBM機器でしか使えない古い通信手順を使っているという記事も見かけるが、それは誤りである。
2.そのコンピューターでしかプログラムやデータベースを使えない
プログラムにはそれを開発するための言語というものがある。IBM iは、多くのAS/400時代からのプログラムが「RPG」と呼ばれる言語で作られており、IBM i以外の環境では一般的なものではないため、そのまま他の環境では動かせない。
だが、他の環境からネットワークを通じて実行を行い、実行結果のデータなどを他の環境で受け取ることは可能であり、オープンシステムと統合できる。また、「Java」「Python」「Node.js」などのオープン系で標準的に利用されている言語での開発は可能となっており、新規開発という面ではオープンシステムとしての標準技術で開発できる。
また、データを「Oracle Database」や「SQL Server」のように標準的な手順で取得、更新したり、追加や削除したりができないのではないかという点も良く聞くがこれも誤りで、全く同じことが可能である。
3.そのコンピューターでしか使えない技術でしか動かせない
システムの資産管理や運用管理はAS/400時代の方法もそのまま維持しつつ、オープンシステムで標準のツールを利用した運用と管理ができるようになっている。
4.昔の技術で作られていて、新しい技術は使えない
1~3で記載した通り、新しい標準技術で開発、テスト、運用、管理が可能である。またPower Systemsは、IBM i以外に「AIX」と呼ばれるUNIXと、現在オープンシステムの標準OS(オペレーティングシステム)となっているLinuxが導入、稼働できる。よって、専用コンピューターだったAS/400とPower Systemsを同列に並べて、PCサーバーなどに置き換えないと使えなくなるというような主張は誤りであることがわかる。
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