IDC Japanは6月2日、人工知能(AI)を活用した国内システム市場予測を発表した。2020年の市場規模は、ユーザー企業が支払う金額をベースにして前年比成長率47.9%の1579億8400万円。2025年には4909億8100万円になるという。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるIT関連の支出抑制といった大きなマイナス影響を受けず、ユーザー企業における企業変革の重要性の認識が向上。デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速していると説明している。
また、ユーザー企業のAIへの取り組みレベルに応じて層別化、多様化が進んでいるという。
中長期計画に基づく継続的な投資でAIの実運用を開始、効果を得始めている先駆的企業(リーダー)と、コロナ禍で企業変革の重要性を再認識、AIの投資を加速させた後発的企業(フォロワー)による概念実証(PoC)増などを要因に挙げている。
AI市場全体の3分の1を占めるソフトウェア市場は、多様なユーザー企業でAIアプリケーションの利用が増え、前年比45.2%増へと伸長。市場全体の成長要因にもなっているという。
ハードウェア市場は104.2%増。COVID-19の研究や対策、AIの推論モデルを活用した非接触ソリューション開発を目的とする「富岳」などに代表されるスーパーコンピューターの需要増、ハイスペックサーバーの前倒し導入などが要因にあるという。
ビジネス変革支援、ITコンサルティング、アプリケーション開発、運用支援といったニーズの向上から、サービス市場も24.8%増と好調に推移したとしている。
2021年の市場規模は、前年比34.1%増の2119億1600万円になると予測。コロナ禍に伴う大きなマイナス影響がないこと、企業に投資重点領域と認識されたことなどを背景に、継続的に成長するという。特にデータマネジメントや分析、従業員の職業能力の再開発を中心に積極的な投資があると分析している。
これらの投資は企業の中期投資計画に組み込まれているため、2022年は前年比28.7%増とスピードが鈍化するが、2020~2025年の年平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)は25.5%になるとしている。
IDC Japanでソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーを務める飯坂暢子氏は「AIを活用して企業価値を得ている先駆者とそうでない者、企業変革を再認識し取り組みを加速する後発者という形で、成長期を迎えている市場でのユーザー企業の層別化が顕著になっている。ITサプライヤーはユーザー企業の共通課題であるデータマネジメントに焦点を当て、レベルに応じた柔軟な支援が求められる」とコメントしている。
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