ディスカウントストア大手ドン・キホーテやユニー、長崎屋などの小売業のほかに流通業やサービス業などを傘下に抱えるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)はロボティックプロセスオートメーション(RPA)プラットフォーム「UiPath」を活用してドン・キホーテ(国内228店舗)に関連する約170の業務を自動化しているという。UiPathが6月15日に発表した。
PPIH(目黒区、連結従業員数1万3546人)は2017年4月頃からRPAに着目。当時3つのRPAベンダーを比較、検討してUiPathの採用を決めた。
無料で利用できるコミュニティー版の「UiPath Community Edition」、無料で利用できるオンライントレーニングサービス「UiPathアカデミー」、必要な技術情報をインターネットで容易に入手できる点などが決め手となった。
PPIHはまた、RPAの導入にあわせて、開発と運用にかかわる組織体制の整備に着手し、情報システム部門内にRPA課を設置。当初は、同部門の数人を他の業務との兼任の形で配備し、グループウェア上での告知活動や説明会の開催などを通じてRPAを紹介するとともに、現場が自動化を望んでいる業務を募集した。
だが、社内から多くの業務自動化への要望が寄せられたが、RPA課が兼任体制であったことから、RPAの活用が思うように進捗しないという問題に直面したという。
そこで、同社はRPA課の人員を専任化する方針に転換。社内リクルート制度でRPA課への転属を希望する人員を募集するとともに、社外からも人員を募集した。
RPA自体が珍しかったこともあり、専門人材を募ることが難しいため、「プログラミング経験不問」という条件で広範に人材を募集。約1年後には、情報システム部門に加えて社内の他の間接部門に所属していた人員、外部からは、IT系専門学校の教員や専業主婦などを採用した。
いずれも業務としてRPAに取り組んだ経験がまったくないメンバーによる専任体制でRPA課を編成した。UiPathアカデミーの活用やUiPath Community Editionを使った実習、職場内訓練(OJT)に取り組むことで、数週間から3カ月程度で全員がUiPath上でのRPA開発のスキルを習得できたとしている。
RPA専任チームにより、PPIHは2021年2月末の段階で店舗業務を中心に現場から寄せられていた250の自動化案件のうち約170にのぼる業務をUiPathで自動化した。
例えば、ドン・キホーテの各店舗にインバウンドで訪れる中国人旅行客の「Alipay」や「WeChat Pay」などのキャッシュレス決済情報を日次でレジのデータと突き合わせるという、日々何時間もかけていた作業をRPAで自動化。各店舗向けの分析レポート配信にもRPAを活用している。
社内システムから売上関連データなどを抽出して、各店舗の求めるフォーマットで事業戦略に供するレポートを生成して提供している。省力化という枠組みを超え、これまで各現場が時間や人的リソースの制約から着手できなかった業務が、RPAを適用することで実現可能になるという成果ももたらされているという。