kintone導入と業務改善の成果は必ずしもリンクしない
2021年4月、クラウドプラットフォーム「kintone」の導入契約数が全国で2万を超えました。ウェブサイトや各種イベントなどで発信される導入事例や具体的なノウハウは数年前と比較して圧倒的に増えましたし、業務改善という言葉も一般的になってきたのではないでしょうか。
kintoneのウェブサイトでは、2万社のなかでも代表的な事例を紹介している(出典:サイボウズ)
kintone導入や活用の拡大につれて、成果が出る取り組みだけでなく成果が出ない取り組みも出てくることでしょう。kintoneは導入の目的やアプリの設計が非常に重要ですが、それ以上に本稼働後の活用推進も重要です。
実は、作り手の想いを詰め込んだ高機能なkintoneアプリが、現場にマッチするとは限りません。見た目や挙動がともに非常に簡素な仕組みのkintoneアプリが広く深く活用され、大きな業務改善の成果につながることも往々にしてあります。
重要なことはkintoneを導入することや豪華絢爛なアプリを作ることではありません。業務改善に関わる全ての人がその背景、目的と、達成した時の自身の姿を個々がイメージする必要があります。
kintoneを活用した業務改善を広く浸透させていくにはどうすれば良いかを考えていきましょう。
kintone導入の目的は?
kintoneの導入を検討する理由は十人十色、千差万別ですが、以下のような理由から始まって、弊社へ相談をいただくことが多いです。
- 顧客情報や業績の管理に表計算ソフトを使っているが、複雑で誰も管理できない
- 社外からは業務データへアクセスできず、毎日必ず事務所に出る必要がある
- 担当者の頭の中にしかない情報が多く、月末の報告まで各案件の状況がわからない
- ハンコをもらうためだけに出社しないといけない
だから、kintoneを検討している――という相談をよくいただきます。
kintoneの導入は業務改善のきっかけには充分になり得ますが、これらは実は“問題”であって、“導入の目的”ではありません。目的や組織として目指す姿があいまいなまま、問題解決のためだけにkintoneを導入するとどうなるでしょう?
- 顧客情報や業績の管理をkintoneに移行したが、入力項目数は同じなので手間は変わっていない。外注して作ったアプリなので、社内で設定を変更できる人はいない
- 報告資料用にkintoneからデータを定期的にダウンロードし印刷用に加工している
- 押印処理は廃止したはずなのに、kintoneを使わず物理押印しか対応しない人がいる
こうなると「kintoneは使えない」「ウチには馴染まなかった」と判断され、押し入れの隅に追いやられたような存在になってしまいます。導入したのに結局使っていないとなると「業務改善にチャレンジしたが失敗した」という結論付けをされてしまい、業務改善に取り組む姿勢は失われていくことでしょう。
このように、kintoneは問題解決の手段という認識に留まってしまうと、仮に切り捨てられなくとも、何の成果も出ていないにもかかわらず「IT化を達成した」という謎の満足感で終わってしまいます。手段が変わっただけですので、どこかのタイミングで何も改善されていないことに気付くことになります。
では、kintoneを導入する目的とは何でしょうか? これは視点によって異なりますが、例えば経営層の視点だと、会社の利益を上げることが挙がるでしょう。現場の視点だと、更なる自己実現の達成(抽象表現)、本来のミッションにより多くの時間と力を注ぐこと(具体表現)となるのではないでしょうか。
シンプルな流れで例えると、こうでしょうか。
「会社の利益を上げるためには無駄をカットしないといけないが、どこにあるだろうか? 定期の報告資料作成に各担当者が何時間もかけている。常時クラウドに集約していつでも誰でも参照できる仕組みにすれば報告書作成の時間はなくせるのではないだろうか。そうすれば追客にもより時間を割くことができ、受注率も上がるだろう。よし、kintoneでアプリを設計してみよう」
このように、組織として、個人として目指すべき姿を明確にし、それを達成するための手段がkintoneであり、取り組みが業務改善なのです。一人ひとりが理解し、現場が現場のためにkintoneアプリを作り、経営幹部が活用の推進を全力でバックアップすることが何より重要です。
kintoneは現場の変化に合わせて育て続けていく必要があります。いつの間にか、使いやすさよりも作り手の自己満足が形になっただけのアプリが展開されていませんか? 手段が目的にならないよう、常に意識してkintoneに接していかなくてはなりません。