国際宇宙ステーション(ISS)でのミッションのために先頃打ち上げられた2台の「Raspberry Pi」の運用が開始された。具体的には、教育を目的とする「European Astro Pi Challenge」の第2段階で使用されている。
この新しい宇宙利用仕様のRaspberry Piである「Astro Pi」について米ZDNetが最後に報じたのは、2021年9月のことだ。Astro Piは12月、第66次長期滞在ミッションの一環として、SpaceXの「Falcon 9」ロケットの「Dragon Cargo」宇宙船に搭載され、米航空宇宙局(NASA)のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。
Astro Piは、欧州宇宙機関(ESA)が地球に焦点を当てた「Mission Zero」と「Mission Space Lab」で実施しているプロジェクトの一環である。前者は若い「Python」プログラマーがISS内の湿度を読み取ることを可能にし、後者は学生がセンサーを使用して宇宙ステーションでさまざまな科学実験を実行できるようにする。
Astro Piボードは、8GBのメモリーを搭載した「Raspberry Pi 4 Model B」をベースとしており、「Raspberry Pi High Quality Camera」、Googleの「Coral」機械学習アクセラレーター、色と光度のセンサー、パッシブ赤外線センサーが追加されている。
NASAによると、ESAの第66次長期滞在ミッションのメンバーで、ドイツの材料科学者およびエンジニアであるMatthias Maurer氏が2022年1月、Astro Piを設置したという。これらの新しいAstro Piは、「EdとIzzy」と呼ばれる2台のAstro Piに取って代わることになる。EdとIzzyは、英国のESA宇宙飛行士のTim Peake氏によって最初のAstro Pi Challengeが開始された2015年からISSに設置されている。
Astro Piは、ISSのAC電源インバーターに接続されたGriffinの電源アダプター、または、ISS乗組員のノートPCのUSBポートを通して給電され、キーボードやモニター、マウスなしで動作する。NASAによると、乗組員の介入なしで処理を開始するように設定されており、イーサネットケーブル経由で「Joint Station LAN」(JSL)ネットワークに接続されているという。
Raspberry Piによると、新しいAstro Piにはまだ名前が付けられておらず、その作業はMission Zeroに参加する若者たちに任されているという。学生たちは現在、欧州のどの科学者にちなんだ名前を付けるべきかを投票で決めているところだ。
Raspberry PiのOlympia Brown氏は、「2022年のAstro Pi Mission Space Labチームが新しいハードウェアで実行する驚くべき実験の数々、そして、彼らが地球上の生命と宇宙の生活について何を発見するのかを楽しみにしている」と述べた。
Astro Piは、ESAとNASAの「Safety Gate」プロセスに合格する必要があった。Safety Gateには、打ち上げ条件に耐えられることを確認する振動テスト、デバイスの動作温度が摂氏45度を超えないことを確認する熱テスト、乗組員の安全のために尖った部分がないか確認するテスト、電磁放射と感受性のテスト、電力消費テストが含まれる。
ESAは、Mission Space Labの第2段階に応募した800チームの中から502チームを選んだ。選ばれたチームは、実験用のプログラムの作成に使用できるESAのAstro Piハードウェアキットを受け取った。機械学習を使用するチームはGoogleのCoral機械学習アクセラレーターを、赤外線写真を使用する実験に取り組むチームは赤色光学フィルターをそれぞれ受け取った。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。