米ロスアラモス国立研究所(LANL)は、750個の「Raspberry Pi」で構成されるクラスタからなるスーパーコンピュータのテストベッドを導入した。また2018年には、Raspberry Piを1万個まで増やす計画があるという。
低温のRaspberry Piの基板で作られた大規模クラスタは、LANLが所有する巨大な「Trinity」(Cray製で、世界最速のスーパーコンピュータ上位10台の1つ)などの、エクサスケールコンピュータ用ソフトウェアを開発する際に直面する課題に対する回答だ。
開発したソフトウェアを、それらの高価なシステムでテストすることは難しい。これは、システムが実際の科学研究のための膨大な計算処理に専有されているためだ。
LANLはRaspberry Piクラスタの構築にかかった費用を明らかにしていないが、ほかのスーパーコンピュータに比べれば極めて安価で電力効率も高いとしている。
LANLはこの7年間、研究に使用しなくなった多くのノードを持つ古いマシンを、ソフトウェアの開発とテストに使用してきた。しかし、このマシンを2万ノードを持つTrinity規模の環境に拡張することはできなかった。また、冷却のための冷水塔やその他の機器も必要だったため、動かすのにかかる費用も莫大だった。
LANLのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)部門で責任者を務めるGary Grider氏によれば、新しいRaspberry Piクラスタは、専用のテストベッドとして、2億5000万ドル(約280億円)の費用と25MWの電力がかかっていた従来のシステムと同じ機能を提供できるという。
1個25ドル(約2800円)のRaspberry Piを750個買っても1万9000ドル(約210万円)以下しかかからないが、実際にシステムを構築するのにかかる費用はもっと高額なはずだ。Grider氏は、電力効率のメリットについても強調しており、数千ノードのRaspberry Piベースのシステムは、2Wから3Wしか電力を消費しないと見積もっている。
Raspberry Pi Foundationによれば、現在の3000コアのRaspberry Piクラスタは試験的なもので、LANLはこの環境を4万コアにまで拡張する予定だという。これは、約1万個のRaspberry Piから構成されたクラスタになることを意味する。

提供:BitScope
今回の試験的なクラスタは、オーストラリアの開発会社BitScopeが構築し、米国の企業Sicorpが販売したものだ。このシステムは5台のラックマウント式Raspberry Piクラスタモジュールから構成されており、各モジュールには150個の4コアRaspberry Pi基盤が搭載されている。CPUの数は合計で750基で、3000個のコアを搭載していることになる。
NANLはRaspberry PiクラスタにはHPCソフトウェア開発以外にも利用できると考えており、これには大規模センサネットワークのシミュレーションの改善や、生産性改善のためのHPCネットワークのトポロジ研究などが含まれている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。