1万個の「Raspberry Pi」でスパコンを作る--米ロスアラモス国立研究所

Liam Tung (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-12-07 10:00

 米ロスアラモス国立研究所(LANL)は、750個の「Raspberry Pi」で構成されるクラスタからなるスーパーコンピュータのテストベッドを導入した。また2018年には、Raspberry Piを1万個まで増やす計画があるという。

 低温のRaspberry Piの基板で作られた大規模クラスタは、LANLが所有する巨大な「Trinity」(Cray製で、世界最速のスーパーコンピュータ上位10台の1つ)などの、エクサスケールコンピュータ用ソフトウェアを開発する際に直面する課題に対する回答だ。

 開発したソフトウェアを、それらの高価なシステムでテストすることは難しい。これは、システムが実際の科学研究のための膨大な計算処理に専有されているためだ。

 LANLはRaspberry Piクラスタの構築にかかった費用を明らかにしていないが、ほかのスーパーコンピュータに比べれば極めて安価で電力効率も高いとしている。

 LANLはこの7年間、研究に使用しなくなった多くのノードを持つ古いマシンを、ソフトウェアの開発とテストに使用してきた。しかし、このマシンを2万ノードを持つTrinity規模の環境に拡張することはできなかった。また、冷却のための冷水塔やその他の機器も必要だったため、動かすのにかかる費用も莫大だった。

 LANLのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)部門で責任者を務めるGary Grider氏によれば、新しいRaspberry Piクラスタは、専用のテストベッドとして、2億5000万ドル(約280億円)の費用と25MWの電力がかかっていた従来のシステムと同じ機能を提供できるという。

 1個25ドル(約2800円)のRaspberry Piを750個買っても1万9000ドル(約210万円)以下しかかからないが、実際にシステムを構築するのにかかる費用はもっと高額なはずだ。Grider氏は、電力効率のメリットについても強調しており、数千ノードのRaspberry Piベースのシステムは、2Wから3Wしか電力を消費しないと見積もっている。

 Raspberry Pi Foundationによれば、現在の3000コアのRaspberry Piクラスタは試験的なもので、LANLはこの環境を4万コアにまで拡張する予定だという。これは、約1万個のRaspberry Piから構成されたクラスタになることを意味する。


提供:BitScope

 今回の試験的なクラスタは、オーストラリアの開発会社BitScopeが構築し、米国の企業Sicorpが販売したものだ。このシステムは5台のラックマウント式Raspberry Piクラスタモジュールから構成されており、各モジュールには150個の4コアRaspberry Pi基盤が搭載されている。CPUの数は合計で750基で、3000個のコアを搭載していることになる。

 NANLはRaspberry PiクラスタにはHPCソフトウェア開発以外にも利用できると考えており、これには大規模センサネットワークのシミュレーションの改善や、生産性改善のためのHPCネットワークのトポロジ研究などが含まれている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Google Chrome Enterprise が実現するゼロトラスト セキュリティの最新実情

  2. ビジネスアプリケーション

    ITSMに取り組むすべての人へ、概要からツールによる実践まで解説、「ITSMクイックスタートガイド」

  3. ビジネスアプリケーション

    業務マニュアル作成の課題を一気に解決へ─AIが実現する確認と修正だけで完了する新たなアプローチ

  4. セキュリティ

    あなたの会社は大丈夫?--サイバー攻撃対策として必要な情報セキュリティの早分かりガイドブック

  5. セキュリティ

    いまさら聞けないPPAPの問題点、「脱PPAP」を実現する3つの手法と注目の"第4のアプローチ"とは

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]