企業の人工知能(AI)に関する取り組みが大きく進んでいることは誰もが知っているが、そのことがもたらす問題や頭痛の種についてはあまり知られていない。新たに公表されたレポートでは、初期のAI導入の目標をすでに達成したか、ほぼ達成した企業の割合が6割を超えたことが明らかになった。これは朗報だが、ITチームがその目標を達成するためにさまざまな対応を迫られていることも意味している。企業がAIを活用するためには多くの従業員に正しいスキルを身に付けさせる必要があり、経営者や管理職には、AIのセキュリティの確保などが求められている。
Juniper Networkが世界中の企業のITリーダー700人を対象として実施したこの調査では、AIソリューションを社内で開発しようとする企業で人材不足やシステムへの統合が課題になっていることや、多くの企業でAIのガバナンスが重要な課題になっていることが明らかになった。
最も注目すべき点は、すでに初期のAI導入の目標を達成したか、達成が間近な企業の割合が63%に上ったことだ。なお1年前の調査では、役員レベルの回答者のわずか6%が、全社的にAIソリューションを導入したと回答していた。それに加えて、今後の展望を尋ねる質問では、2021年はユースケースを限定した導入を目指す意見が主流だったにもかかわらず、今回は全面的にAIを導入しようという機運が高まっていることも明らかになった。AIを積極的に利用する業務プロセスを広範囲で導入したいと答えたITリーダーの割合は、11%から27%に急増している。
長年の問題である、AIを「社内で構築するか、社外から調達するか」という問題も表面化した。既存のAIソリューションを導入するか、社内で構築するかの選択に関しては、企業によって対応が分かれている。10人に4人近く(39%)の回答者が、既存のAIソリューションと自前で構築したものを組み合わせていると答えていた一方で、既存のソリューションだけを使用すると答えた回答者と、社内で構築したソリューションだけを使用すると答えた回答者もそれぞれ3割いた。
AIソリューションを社内で構築することには、相応の困難が伴う。社内でAIを開発している企業に直面している課題を尋ねる質問では、最も多かった回答は「信頼性」(53%)で、既存のシステムとの統合(46%)、新しいAIに関するスキルを持つ人材の獲得(44%)、開発にかかる時間(44%)がそれに続いていた。
また、社内のAI機能を最適化する上で優先的に投資する分野のトップ3は、AIの機能を運用・開発できる人材の雇用、AIモデルのさらなるトレーニング、現在のAIツールの機能を拡大すること(いずれも21%)だった。