NECが7月28日に発表した2022年度第1四半期(2022年4~6月)の連結業績は、4月にスタートした新事業体制において最初の通信簿となった。同社は4月1日付で、従来の事業部レベルの組織を市場や製品、サービス、機能といった単位で大ぐくりにし、組織数を約150から約50と3分の1にまで減らし、CEO(最高経営責任者)から担当者までの職位を8階層から6階層に集約している。
社内からはプロフェッショナル職の幅が広く、年齢層や給与体系についてもばらつきがあること、報酬の仕組みが変更したことなどに対して、困惑を感じている声が一部から出ている。だが「2025中期経営計画」では、2023年度を目標に戦略単位を基軸とした事業体制を確立すること、同時にジョブ型人材マネジメントへの移行を進める考えを示しており、それに向けた第一歩を踏み出した第1四半期となった。
NECの2022年度第1四半期の連結業績
第1四半期の連結業績は、売上収益が前年同期比1.2%増の6596億円、営業利益が前年同期の11億円の黒字から153億円の赤字に、調整後営業利益は105億円から70億円の赤字に転落。また、税引前利益も29億円から66億円の赤字、当期純利益は2億円から138億円の赤字となった。
NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏
NECは、富士通と同様に下期偏重の経営スタイルだが、それでも赤字スタートという厳しい内容となった点は気になる。代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏は、「第1四半期実績を調整後営業利益ベースで見ると、計画からは100億円程度後退している」とする。調整後営業利益が70億円の赤字であったことから逆算すれば、本来なら30億円程度の黒字を見込んでいたことが分かる。「これは第1四半期における社会公共とネットワークサービスの立ち上がりの遅れが原因」(森田氏)とし、「通期で着実にリカバリーをすれば回復できる」と自信を見せる。
セグメント別では、社会公共の売上収益が前年同期比14.6%減の765億円、調整後営業利益が41億円減の41億円の赤字だった。公共・医療分野における前年同期の大型案件の反動減が影響している。また、ネットワークサービスは売上収益が4.0%減の1001億円、調整後営業利益が84億円減の85億円の赤字となった。国内グローバル5Gでの一部需要が2023年度にシフトしたり、海外でも上期中に見込んでいた受注の一部が下期にずれ込んだりしたのが原因だ。NECによると、社会公共では計画に対して40億円の下振れ、ネットワークサービスでは50億円の下振れがあったという。
だが、中長期的には前向きに捉えている。受注状況を見ると、社会公共では、公共や医療を中心に全ての領域で増加し、前年同期比15%増となっている。また、ネットワークサービスは、固定通信系の大型案件の反動減や5Gの微減により11%減となっているが、中長期的には成長するとの見方を示している。
森田氏は、「社会公共は、年間で好調な受注により底堅く推移すると見ている。中堅中小企業向けと都市インフラ向けの需要回復が想定より遅れているが、中堅中小企業の需要は底を打ちつつある」とする一方、「ネットワークサービスは、期初に前年度比で大幅な増加を見込んでいたが、国内客先設備の低調な推移などがあった。ただし、これらの商談がなくなるのではなく先に獲得できる案件」と語る。それを裏付けるように、会見では、「2025 中期経営計画におけるグローバル5Gの計画には変更はない」と強調。先送りになったネットワークでの商談を獲得する姿勢を示した。
受注動向
だが、今回の発表では、セグメント別の通期業績予想を見直した。社会公共の売上高を4月公表値から400億円減の4500億円、調整後営業利益を100億円減の370億円に下方修正した。ネットワークサービスも売上高を450億円減の5300億円、調整後営業利益を150億円減の310億円に下方修正し、「それぞれボトム値に下方修正した」(森田氏)とする。
2022年度は、社会公共およびネットワークサービスが一度厳しい状況には陥っているが、2025中期経営計画の推進において、2023年度以降の回復が大きなにポイントになる。