「Linux」は素晴らしいOSだ。筆者は20年以上にわたってLinuxの美点を説いている。1999年には、「Linux Magazine」(現在は廃刊)の初代シニアテクノロジーエディターを務めた。テクノロジー分野でのキャリアとしては、UnisysとIBMでオープンソースのデータセンターテクノロジー担当プリンシパルコンサルタントを務めた経験もある。
現在は、The Linux Foundationでリサーチ担当エディトリアルディレクターとして働いている。そのため、Linuxには詳しい。
これまでに使用したLinuxデスクトップには「RedHat Workstation」「CentOS」「Ubuntu」「Mint」「Debian」などがあり、Linux向けGUIは「GNOME」「KDE」「XFCE」など、思いつく限りのすべてを使ってきた。また、それらすべての奇妙なフォークを何十と使用してきたはずだ。
筆者が見たところ、その中に一般のエンドユーザー向けとして設計が並外れて優れたシステムは1つもない。開発者やテクノロジーの専門家にとっては素晴らしいシステムだが、一般的なオフィスワーカーや学生、あるいは自宅でサイトにアクセスして作業したいだけの人にとって、Linuxデスクトップは何というか、良いものではない。
ジャーナリストとして仕事でテクノロジーについて執筆する筆者が、どのシステムを使用しているか分かるだろうか。「Mac」だ。2018年から使っている。
オープンソースの評論家たちは、Linuxデスクトップの年がやってくる、とずっと前から宣言しているが、それが現実になったことはない。Linuxはクラウドやハイパフォーマンスコンピューティング、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)、スマートフォン業界を征服したものの、Linuxデスクトップが人気になったことはない。それはなぜだろうか。
Linuxに乗り換える動機や必要な技術スキルがないからなのか。新しいことを学ぶ必要があるからだろうか。古いOSが正常に機能しているなら、なぜ乗り換えるのか。テクノロジーに詳しい人の力を借りないとインストールできないなら、なぜそんな面倒なことをする必要があるのか。
こうした論理が変わったようにも思えるが、それは私たちがよく知るLinuxディストリビューションの話ではない。業界を変革していくLinuxは、「ChromeOS」だ。
ChromeOSは使える
真実を直視しよう。ChromeOSは非常に使いやすく、皆がそのウェブブラウザーの使い方をすでに知っている。同OSを搭載するノートブックは安価で、200~400ドルの価格帯だ。一般的なエンドユーザー、すなわち「Microsoft 365」や「Windows」、Macを必要とせず、「Google Workspace」の使用に抵抗がなく、主にウェブベースのアプリを利用する人の要件は満たしている。おそらく、そうした人がユーザー人口の90%を占めているはずだ。
そのようなユーザーは、パッチやシステム管理者の仕事に頭を悩ませたくない。ウェブサイトを正常に機能させたいだけだ。サイトが迅速に応答すれば、あるいは動画の視聴やビデオ通話ができれば、ドキュメント、データ、ソーシャルネットワークにアクセスできれば、それでいい。
しかし、ChromeOSが重要な存在になると考えられる大きな理由が1つある。多くの古いPCは、「Windows 10」「Windows 11」の最新バージョンや、現行の「macOS」にアップデートできない。これらのPCに根本的な問題は一切ないが、古すぎるという理由だけで、メーカーのサポートを受けられなくなっている。
それらのマシンはサポートの負担になるだけでなく、多くの場合、古いソフトウェアが稼働していて、最新のセキュリティ標準に完全には準拠しておらず、旧式のブラウザーやその他の気難しくて危険なものが動作している。
それに比べると、ChromeOSは安全性が高い。非常に安全だ。古いWindowsやMacのシステムを苦しめる多くのエクスプロイトに対して脆弱ではない。
だが、聞いてほしい。それらのマシンの多くは、棚に置かれてホコリをかぶっているが、もう一度生産活動に利用できる可能性がある。