サイバー犯罪者がディープフェイクを使い、正体を偽ってオンライン就職面接を受けるケースが出始めている中、セキュリティ研究者が、ビデオ会議でディープフェイクを見分ける簡単なテクニックを公開した。それは相手に顔を横に向けるように頼むことだ。
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これは非常に便利な本人確認の手法だが、この手法が有効な理由は、ディープフェイクの人工知能(AI)モデルは正面から見た人間の顔を再現するのは得意だが、真横から見た顔を再現するのは苦手だからだという。
AI技術を手掛ける英Metaphysics.aiは、ライブのディープフェイク動画では90度横からの顔映像の再現が不安定であることを示し、動画ベースのオンライン就職面接を行う企業は、単純で効果的な本人確認手順として横顔のチェックを利用できるとする寄稿記事を掲載した。
AIによって可能になった人間の音声、画像、動画の再現は、ディープフェイクとも呼ばれており、数年前から、人間の正体を偽ることができる潜在的な脅威として注目されている。
米連邦捜査局(FBI)は6月、コロナ禍以降に一般的になったオンライン就職面接に、攻撃者がディープフェイクの音声や動画を使用して参加する例が増えていると警告した。FBIは、技術職の求人がディープフェイクを使った偽の求職者の標的になっているとしている。これは、その仕事に就くことができれば、攻撃者が企業のITデータベースや、顧客情報や、企業秘密にアクセスできるためだ。
FBIは、咳やくしゃみなどの音が動画と一致しない場合、ディープフェイクを見抜ける可能性があるとしている。横顔のチェックは、オンラインビデオ会議を始める前に、素早く簡単な手順で相手の本人確認を行う手段になり得る。
Metaphsyics.aiに記事を寄稿したMartin Anderson氏は、実験の詳細について説明している。テストしたディープフェイクのほとんどは、頭部が90度の角度になると明らかに問題が起こり、その人物の実際の横顔の要素が現れたという。横顔の再現に失敗するのは、横顔に関する高品質なトレーニングデータが不足しており、ディープフェイクモデルが、不足している部分について多くのことをでっちあげたり、間を埋めたりする必要があるためだ。
ディープフェイクで顔を再現するためには、ソフトウェアが人間の顔のランドマークを検出しなければならないことも、問題の1つだ。顔が横向きになると、前面から見た場合と比較して、アルゴリズムが検出できるランドマークが半数になってしまう。
Anderson氏は、横顔の動画を使って顔を再現する際の大きな問題点として、2Dベースの顔の位置合わせアルゴリズムに制約があることと、ハリウッドスター以外のほとんどの人には、単純に横顔のデータが存在しないことを挙げた。