大手チップメーカーであるNVIDIAは人工知能(AI)の世界に大きな影響を与えているが、業界標準のAIベンチマークである「MLPerf」の最新ラウンドの結果に何か意味があるとすれば、同社の市場支配力がこれまで以上に高まっていることを意味するのかもしれない。
提供:NVIDIA
米国時間11月9日、機械学習のパフォーマンスを計測するベンチマーク「MLPerf」を管理している業界コンソーシアムMLCommonsは、ニューラルネットワークの「トレーニング」に関する最新のベンチマーク結果を発表した。
今回のラウンドでは、NVIDIAに対抗するチップメーカーが大手のIntelだけという異変が起きた。NVIDIAの対抗馬が1社だけというのは、この3年間で初めてのことだ。
前回の6月の発表を含めて、これまでのラウンドには、Intelに加えて、「Tensor Processing Unit(TPU)」チップを持つGoogleや英国のスタートアップであるGraphcoreなど、2社以上の競合他社が参加していた。中国の大手通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ)が参加していたこともある。
6月のラウンドはNVIDIAとGoogleが首位を分け合う結果になったが、今回はすべての項目でNVIDIAが首位に立った。NVIDIAは、数年前に発売された同社のGPU「A100」を使用したシステムと、新型GPUである「H100」を使用したシステムを提出した(H100は、計算機科学のパイオニアであるGrace Hopper氏にちなんで「Hopper」と名付けられている)。H100は、MLPerfが用意している8種類のベンチマーク種目の1つである、「レコメンデーションシステム」で首位のスコアを獲得した。レコメンデーションシステムは、企業がウェブ上で顧客に製品を提案する際によく使用されているシステムだ。
一方Intelは、「Habana Gaudi2」を使った2種類のシステムと、近く発売予定のサーバー用チップである新型「Xeon」(開発コード名「Sapphire Rapids」)を使用した「プレビュー」のシステムをいくつか提出した。
ベンチマークでは、IntelのシステムがNVIDIAのシステムよりもかなり遅いことが分かった。
NVIDIAは、「H100 GPU(Hopper)は、MLPerfトレーニングのアクセラレーターごとの性能における水準を引き上げた。これらのシステムは、MLPerfに最初に提出された前世代のGPUと比べて、6.7倍のパフォーマンスを発揮した。同様の比較で、今日のA100 GPUはソフトウェアの進歩によって、以前の2.5倍の能力を発揮できる」とプレスリリースで述べている。