チャットボットの類いは1960年代から存在していたが、2022年終盤に登場した「ChatGPT」には、投資家やIT企業、一般大衆を魅了する何かがある。
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すでにインターネット上には、不本意な交通違反切符について争うための専用のチャットボットから、ワークアウトやダイエットの計画を立てるチャットボットまで、ChatGPTの人間に近い対話能力を利用するアイデアが溢れかえっている。
しかし、もっと大きな疑問が存在する。それは、ChatGPTが(あるいはより正確には、そこに使われている技術が)「iPhone」やGoogle検索、Amazonの「Alexa」などの世代を代表する他のブレークスルーと同じような、世界を一変させるような影響力を持つ技術になるかどうかだ。
この疑問の回答が出るまでには年単位の時間がかかる可能性が高いが、人工知能の専門家は、2023年にはChatGPTに使われている技術を用いた新たな製品やアプリケーション、サービスが大量に登場すると予想している。この技術は、カスタマーサービスのチャットボットや、Alexaや「Siri」のような音声を使用したバーチャルアシスタントや、検索エンジンや、電子メールの受信箱などのさまざまな技術と、人間との相互作用のあり方を大きく変えるかもしれない。
アレン人工知能研究所の顧問であり、同研究所の理事を務めるOren Etzioni氏は、「6カ月以内には、チャットボットや音声アシスタントの会話能力が大きく向上するだろう」と述べている。
2023年に入ってから、ChatGPTが私たちの仕事に与える影響に関するニュースがいくつも報じられている。例えば、OpenAIのプレジデント兼共同創業者であるGreg Brockman氏は、米国時間1月10日に、ChatGPTのパフォーマンスを向上させたプロフェッショナル向けの有料版ChatGPTを準備しているとツイートした。またThe Informationは、複数の記事で、ChatGPTを生んだOpenAIの出資企業であるMicrosoftが、「Bing」「Outlook」「Word」「PowerPoint」などの製品にこの技術を取り入れることを検討中だと報じている。ニューヨーク市教育局が、「生徒の学習に対する負の影響が懸念される」として学校のデバイスからChatGPTへのアクセスをブロックしたことも話題になった。The Wall Street Journalは、OpenAIが約290億ドル(約3兆8000億円)規模の株式公開買付けを実施することを検討しており、米国で最も企業価値が高いスタートアップの1つになる可能性があると伝えている。
McKinsey Global InstituteのパートナーであるMichael Chui氏は、「物事にはハイプサイクルが存在し、この技術が現在世間の想像力を刺激していることは明らかだ」として、「しかしハイブサイクルの背景では、ビジネスにおける現実的なユースケースに徐々に技術の進歩が組み込まれる過程が進んでいるものだ。そしてそれはすでに始まっている」と述べた。