NTTデータ グローバルソリューションズ(NTTデータGSL)は2月21日、これまでのSAP事業と今後の事業戦略について記者説明会を開催した。また、同社が進めるSAP人材の育成についても明らかにした。
会見した代表取締役社長の磯谷元伸氏はまず、同社設立10年間の実績と成果を振り返った。NTTデータGSLは、NTTデータとNTTデータソルフィスのSAP事業、クニエの運用保守(SAP-AMO)事業を集約・統合した形で2012年に設立。NTTデータグループのSAP事業を遂行・促進する中核会社として、「20年以上にわたるSAPビジネスで培った強みとノウハウを集約し、企業のグローバル戦略遂行をスピード感を持ってサポートする」と自社の強みを語った。
次に同社の10年間について、2012~2013年を「設立・勃興期」、2014~2016年を「急拡大・成長期」、2017~2019年を「改革・安定期」、2020~2022年を「再拡大期」の4つのフェーズに分けて説明した。
設立・勃興期は、「3つの会社の文化、業務プロセスを統合させる時期」だったといい、2012年にはSAPシステムに特化したフルマネジメントクラウドサービス「inERPia(イナーピア)」をマレーシアのデータセンターで提供開始した。なお、独SAPがデータ処理基盤「SAP HANA」の提供を開始したのは2011年6月で、磯谷氏は「(SAPが)アーキテクチャーで大きくかじを切り始めた時期ともちょうど重なった」と当時の状況を話す。
NTTデータ グローバルソリューションズ 代表取締役社長の磯谷元伸氏
次の急拡大・成長期は「中途採用人材の大量採用、事業規模の急拡大」を経験した時期だった。2015年には統合基幹業務システム(ERP)「SAP S/4HANA」が発表され、それに伴いERPで「守り」から「攻め」に転じるにはどうすればいいかを「真剣に考える」とともに、ERPの業務コンサルティングからSAP HANAの技術サポート、Amazon Web Services(AWS)に加えてMicrosoft Azureに対応したインフラ保守の強化なども図った。
改革・安定期は「継続的に利益を生み出せる筋肉質な企業への転換」を進めた時期になる。2017年11月にSAP S/4HANAの導入テンプレート「GBMT」がSAPジャパンのパートナーソリューションとして承認され、2018年5月にinERPiaのAWSサポートを開始した。経済産業省が「2025年の崖」を発表した2018年には、S/4HANAの需要が中心となっており、基幹システムの最適解や対応範囲、導入方法を議論しながら進めてきた。中堅中小企業への導入も加速し、GBMTをいち早くS/4HANAに対応させ、ベストプラクティスでの企業の変革を支援してきたとする。
直近となる最後の再拡大期は「大型案件を複数受注、売り上げ・利益とも大幅な伸び」を示したと説明する。2020年1月にS/4HANAへの移行を支援するサービス「i-KOU!」、同3月に人工知能(AI)を活用した業務改善サービス「aidoneo」の提供を始めた。ヨネックスや日本触媒のS/4HANA導入を支援するなどの実績があった。また、従来のERPコアから顧客体験(CX)の領域にも業務範囲が拡大したと語る。
同社が提供するサービスとしては、「基幹システムの再構築」「SAPソリューションの運用保守」「グローバルビジネスの最適化」「周辺系エコシステムの強化」「クラウドやAI技術の活用」「デジタルトランスフォーメーション」の6つを挙げた。加えて、同社は日系グローバル企業の支援をミッションとしており、国内拠点だけでなく、海外拠点での導入支援も行っているのが最大の特徴だという。この10年で30カ国でのプロジェクトを推進したとしている。
NTTデータGSLが提供するサービス
導入実績では、これまでS/4HANAを45社に導入し、2023年には5社の稼働を予定。中堅企業向けのクラウドERP「SAP Business ByDesign」は既に30社に導入し、2023年には4社の稼働を予定している。
また、これからの10年を展望した磯谷氏は、基幹システムのクラウド化が進むとともにSAP ERPからのマイグレーションを中心に「SAP S/4HANA Cloud」の導入が加速すると見込む。「顧客企業はクラウドサービスを使って、ビジネス成果をスピーディーに出していく時代になる。NTTデータGSLは顧客企業のDXに向け、エンハンスメント(機能拡張)や推奨ソリューションを提案し、価値創出するシステム全体のライフサイクルに関わる中で、長期的なパートナーシップを確立していく」(同氏)
クラウド時代の顧客企業とのパートナーシップ
事業戦略推進部 HRDセンター センター長の大村友介氏は、同社が進める「SAP人材の育成」の取り組みについて説明。企業のDXニーズが拡大するのに伴って、人材獲得は「異次元の様相」を呈しているといい、「SAP経験者の採用市場は、人材獲得合戦が日ごとに加熱している」と話す。
また、SAP経験者の採用激化がもたらす状況が組織における成長の鈍化や既存社員の流出リスクを招くとして、「看過できない重大な経営課題」であると指摘。そうした課題解決を目指し、NTTデータGSLでは2019年初頭から企業内大学の構想を開始し、同10月に「GSL大学」を開校した。
「個々人の成長を組織の成長につなげる」というのを大きなコンセプトに、SAPの専門スキルを習得する「プロフェッショナル能力」、マネジメント能力など社内で活躍するための能力を習得する「執務遂行能力」、業務を遂行するために必要な能力などを習得する「業務遂行能力」などのテーマで講座を用意している。加えて、「プロジェクト管理」「会計」「ロジスティクス」「システム・先端技術」「グローバルビジネス」の各テーマで研究室を設け、部門やプロジェクトで培った知識やノウハウを組織横断で展開することを目指している。
GSL大学の構成イメージ
他にも、上級コンサルタントの知見や各部門のソリューション事例などの共有の場として社内公開講座を展開したり、社内向けに冊子を年次で発刊したりするなど幅広く活動している。
GSL大学の今後について、大村氏は社外向けのブランド活動も狙っていきたいとし、専修大学、情報経営イノベーション専門職大学への講義提供や、NTTデータおよびグループ各社、ビジネスパートナーに対するSAP人材創出サービスの提供などを紹介した。